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alone 39=黒髪ショートの少女=

[365]  兼古 朝知  2010-04-08投稿


「ここ…どこ?」

気がつくと、夕は荒野にひとり立っていた。

『ゆ う…』

どこからか、己を呼ぶ声が聞こえる。

「誰…?」

『私だ、夕…』

その声と共に、夕の100メートルほど先のところに、見慣れた姿が現れた。

「お父さん?」

『そうだ…』

父とわかるといなや、夕は父に近づこうとした。

が。

「え…!?」

地面から手が伸びてきて、夕の足を掴んだ。

「やだ、お父さ…」

助けを求めようと、父を見たときだった。

――ゴトリ

夕の父の首が、何の前触れもなく地に落ち、転がった。血が鼻から口から、耳からも流れていく。

「…いゃッ…!!」

夕が涙目になって叫ぼうとした時。

『ゆう…』

『夕ちゃん…』

『夕姉ちゃん』

夕の母が、知り合いが、妹分の子供が、辺りに何人も現れた。

「み、みんな…お父さんが、お父さんが…!!」

しかし。

――ゴトリ

――ゴトゴトゴトッ

父と同じように、首が地に落ちていった。
体だけは直立不動のまま動かずに。

「何で、何で…!?」

夕の目からボロボロと涙が溢れだす。

『何泣いてんだ、夕』

「!」

振り返ると、そこには晶が立っていた。
先程までの父達とは違い、手を伸ばせば届きそうな位置にいる。

「晶ぁ…」

『大丈夫だって』

晶は苦笑した。そして動けない夕に手を伸ばす。
夕も手を出した。

その時だった。

――サラサラ…

「!!」

晶が砂と化し、無惨にも風に流れていったのだ。

「晶…!?」

晶は そのまま消えていった。

「夢よ、こんなの…!!醒めてよ、醒めて…!!」

夕が言い、顔を伏せた。

『コレで一緒だね…』

「え…!?」

目の前で声がした。
見知らぬ小さな少女だった。黒髪ショートで、大きなつり目の少女。

『私と同じ、独り...』

「あなたは誰…?」

夕が尋ねると、少女は答えた。

『私、ミツル。たった今お母さんを殺したの』

「ミツル…!?ミツルってもしかして…」

ミツルと名乗った少女は、何も言わない代わりに寂しそうに笑った。

(もしかしてあなたは…)


中村…水鶴…!?

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