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僕と和子と敬太郎 第十三話

[412]  カルロス伊藤  2010-04-09投稿
改めて自己紹介しよう。
僕の名前は石原翔太、17歳の高校生だ。

秋の気配が感じられるようになってきた9月のある日、僕は『敬老の日』のプレゼントを買う為、祖母と一緒に繁華街を歩いていた。
僕は新聞配達で貯めたお金で祖母にストールを買ってあげた。
ストールを買ったデパートのレストランで食事をし、店を出て広い交差点に差し掛かった時、一台の軽トラックが猛スピードでこちらに近付いて来るのが分かった。(危ない!)と思い咄嗟に祖母を半ば乱暴に歩道の奥に突き飛ばした瞬間、トラックは僕の目の前に在った。その後はコンマ何秒の世界だろうか、一瞬目の前が真っ暗になり、一旦戻った明るさが段々と薄れて行くのが分かった。


気が付くと僕は病院のベッドの上に居た。
奇跡的に一命は取り留めたが、暫くの間意識が戻らず生死を彷徨っていたらしい。
その間僕の頭の中を支配していたのが、僕の前世と思われる人が経験した一連の出来事だった。彼と同じ境遇で事故に遭ったが故に、前世の記憶が蘇ってしまったのだ…と僕は理解した。或は、この事故は必然的な僕の運命なのかもしれない。
見舞に来た友達にそんな話をしても、「意識を失ってる間、夢でも見たんだろ」と片付けられて、信じてはもらえなかった。夢だったんだろうか…いや、けして夢ではない。そんな確信が不思議と僕の中にはあった。

「翔太、お見舞に来たよ。御免ねえ、おばあちゃんがしっかり歩かなかったばっかりに」
「お祖母ちゃんのせいじゃないよ。トラックの運転手がお酒を飲んでたんだって…ところでお祖母ちゃん、お祖母ちゃんが若い頃、戦争へ行った人の為に作った歌は完成したの?まだ見ぬ夢も国の為…ってやつ」
「え?何でそんな事知っとる。これはおばあちゃんと健ちゃん…健二君言う、おばあちゃんの大切な友達しか知らん話じゃよ」
お祖母ちゃんは、びっくりして不思議そうな顔で僕を見ていたが、僕に健二の面影を重ねたのか、いつしか懐かしい人を見る様な眼差しになり、
「うんうん、歌ってあげるよ。聴いておくれ」

未だ見ぬ夢も國の為
忘れて遥か遠い地へ
愛しき人を偲ぶれど
命を賭して護りたる
ああ君達の熱き意志
しかと心に刻み込もう
ああ美しく散るならば
花の名は永久に残るだろうが
散らずに帰って来ておくれ
そばでそっと咲いていておくれ

    −完−

感想

  • 37077: いつもドキドキでした♪ [2011-01-16]

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