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alone 44=無想だな=

[356]  兼古 朝知  2010-04-10投稿


「よっ、早いじゃん」

あの林のあの場所周辺を訪れると、水鶴が圭を従えて立っていた。
晶は にこやかな笑みを浮かべ、手を挙げた。

圭は晶をギロリと睨んだ。見知らぬ客に威嚇をする番犬のように。
水鶴は「あぁ」と小さく返事をするのみだった。

三人とも雨に濡れ、髪の先や指先などから雨粒を滴らせていた。

水鶴が口を開いた。

「安心しろ。柊はお前に手を出さない。たとえ私が死のうとな…」

水鶴が ちらと圭に目をやると、今まで殺気を放っていた圭は 嘘のようにペコリと水鶴に頭を下げた。

「どっちかが死ぬまで…やりあうのかよ?」

晶が苦々しい表情で尋ねると、水鶴は「当たり前だろう」と答えた。

「敵同士殺しあいをしないなどは甘い考えだ」

フンと鼻をならして水鶴が そう言うと、晶は雨に濡れて鬱陶しくなった前髪をかき上げて言った。

「…ハッ、甘くて結構!俺は他人を殺すのが嫌いだからな」

「流石は自神宗陣内で有名な優男だな、晶」

右の横髪を耳にかけ、水鶴は言った。

「ヤサオトコだぁ?」

片眉を上げて晶が聞き返す。すると水鶴の代わりに圭が口を開く。

「自神の兵で
お前に遭遇した者は
皆生きて帰ってき…た。
どんな傷を
負っていて…も…。
…とんだ優男…だな。
俺たちには
いい迷惑…だ…。
そいつらはお前を恐れて
戦わなく
なるのだから…な」

圭は忌々しげに舌打ちをする。彼は晶や水鶴のように髪をどけることはなく、長い前髪の隙間から晶を睨んでいた。

「そんなら戦わなきゃいいじゃん?」

晶は平然とそう言ってのけた。

「俺は この戦いをさっさと終わってほしいって思ってるしな」

――キィンッ!!

晶の言った直後、鋭い金属音が辺りに響いた。

水鶴が晶に斬りかかり、晶がその剣を己の剣で受け止めたのだ。

「無想だな…晶」

「あァ…?」

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