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ミットに向かって-2-

[655]  沢村エイジ  2010-04-11投稿
練習試合の朝。

少し早い時間に家をでた光は玄関横に置いてある自転車にまたがり、大きな欠伸をしてからこぎだした。

昂南高校は光の家から自転車で10分くらいのところにある。
欠伸をしながら涙を拭くと、目の前に見覚えのある奴が歩いていた。

「よっ!武司」
自転車に乗りながら背中を軽く叩く。

「今日も一段とうるさいな」武司は顔を向けず、目だけで光をとらえる。

「そんな事、言うなって!一緒に行こうぜ?」

それからしょうもない話をしながら学校へ向かった。
豊岡 武司(トヨオカ タケシ)。中学からの仲間でキャッチャーをしている。
野球センスがずば抜けていて、2年生でレギュラーを獲得しているのは武司だけだ。

他にもピッチャーの横田 康平(ヨコタ コウヘイ)やファーストの佐藤 圭介(サトウ ケイスケ)も中学からの仲間だ。

今日の試合の相手は武端高校だ。打撃力はあまり無いが守備が固い。

学校につくと横田達が盛り上がっていた。何を話しているのか、聞いてみると、なんと3年生の真野先輩が肘を怪我してしまったらしい。

真野 俊也(マノ シュンヤ)。一応エースだか、球が凄く速い訳ではなく、変化球が凄く曲がる訳ではない。全ての面で"そこそこ"だが、そんな真野先輩がエースしなければならないほど昂南の投手陣は層が薄い。

3年は真野先輩とコントロールの良い、藤沢先輩。
2年生は左利きでサイドスローの横田と速球派の沢木。計4人いるがまともに投げられるのは真野先輩だけだ。

昂南は後攻だ。
だれもが真野がいないという不安を抱えながら守備についた。

「プレイボール!」
主審の鋭い声がグラウンドに響き渡った。

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