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ミットに向かって-3-

[639]  沢村エイジ  2010-04-11投稿
先発は3年の藤沢先輩。守備はキャッチャーを武司が守っているが、そこ以外は全て3年が守っている。

藤沢先輩は9イニング投げ切ったが、結局1対2で負けてしまった。

「おい!次の試合は2年生主体のチームで戦う。相手も2年生主体だ!急いで準備しろ!!」
どんよりとした空気の中を鈴木監督の支持が飛ぶ。

本名、鈴木 勲(スズキ イサオ)。鈴木監督は現役時代、プロ入りも噂される程の投手だったが、ドラフト直前で肩を壊しプロ入りを断念。その後、昂南高校の野球部顧問になった。いかつい顔や少し出ているお腹が印象的だ。

その鈴木監督が相手の監督と話をつけたおかげで2年生にチャンスが来たのだ。光にしてみれば有難い話だった。

そして試合は始まった。先発は横田で、光はライトで8番だ。一試合を投げ切った藤沢先輩はベンチで肩を冷やしている。

「バッチコーイ!!」
みんな次々に声を出す。

ピッチャーの横田は左のサイドという最大の武器を手にして武端高校の打線に挑んでいくが、甘い球が多く滅多打ちにあってしまった。
4回になった時には0対5になってしまった。

「横田を沢木に代えた方がいいんじゃないですか?」 ボソッと平田コーチが鈴木監督に告げる。

「そうしましょう」
そう言って横田と沢木に継投する事を伝える。
「くそっ!!」
横田は小さく呟き、拳を固めた。

昂南打線はヒットがなかなか出ず、武司がツーベースヒットを打っただけに終わった。
沢木はストレートを中心にテンポ良くなげているが、ボール球が多くファーボールを連発していた。

6回の守備で沢木が完全に崩れた。

こんなピッチングじゃあ、代えられた横田は悔しいだろう。
ずっとその事を考えてた光は沢木にイライラして、怒鳴ってしまった。

「そんなに入らねぇんなら、ピッチャーなんてやめちまえー!!」
言ってから後悔した。コーチも監督も光の方を見ていたからだ。

「神山!!お前にピッチャーが出来んのか!?」
監督から怒鳴られたが、光は不思議と胸が高ぶっていた。

「はい!出来ます!!」
そう言うと監督は主審のところへ行き、
「ピッチャー交代、神山」
と怒り混じりの声で告げた。

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