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航宙機動部隊第四章・11

[463]  まっかつ改  2010-04-14投稿
殺到する合衆国艦載艇の大群に統合宇宙軍側は迎撃機四00を振り向けた。
双方くんずほぐれつ尻尾の取り合いを繰り広げた末、煙を上げる者、火球と化す者、爆発すらせず無数の部品にまでばらばらとなる者が相次いで禍々しく空間を彩る。
それを更に両陣営からの援護射撃が光の帯を稠密に振り注ぎ、死と狂熱うごめく芸術作品を作り上げた。
迎撃ラインを粉砕し猛烈な対宙砲火を突破した合衆国航宙艇部隊は、素早く目当ての艦を見付けると投弾コースを取った。
敵船体を狙って攻撃艇から切り離される滑宙弾・放たれる航宙魚雷が次々と装甲を食い破り、その奥深くで水素爆薬を炸裂させる。
小艦は一発で真ん中からへし折られ、もしくは左右真っ二つに別れてから、大艦も数発の直撃弾に内臓をぐちゃぐちゃにされてから人工の星となって夥しい破片と人命を撒き散らす。
この時点で勝敗はほぼ明らかとなった。
いよいよ管制の取れなくなった帝国軍は、全軍単位での対応が不可能となったのか、各小集団・下手をすれば個艦だけで目前の脅威に的の外れた対処をするのが精一杯。
明後日の方角に撃ち込まれる防御砲火を嘲笑う様に、合衆国航宙艇は獲物を捕らえ、もがき苦しむそれ等を一艦また一艦と血祭りに上げて行く。
『敵艦隊後退中』
合衆国旗艦《グロズヌイ》戦闘艦橋は再び、今度はより大きな歓声に包まれた。
参謀長・アボース准将は指揮座に鎮座するバクーシン少将に戦況解析盤越し向かいから敬礼して、
『司令。我が軍の勝利です』
『敵味方の損害は?』
少将の問いに、器用に上半身だけを真後ろに回した参謀長はオペレーター達の報告をひとしきり集めては分析し、すぐにこちらに向き直った。
『我が方の損害は大中小破四三、撃沈は無し。航宙艇未帰還五五。敵への戦果は撃沈七七・大中小破ニ九0・航宙艇一三0以上撃墜』
追撃しますか、と問われてバクーシンは首を横に振った。
『隴を得て蜀を望む―我々もここらで限界だよ。ここから先は後から来る主力部隊に任せよう』
ここで帝国軍完全撤退の知らせが入ってバクーシンは航宙艇の回収と艦隊の再編を命じた。
彼等の任務はあくまでここアリ=アリアンス宙沖を確保する事。
これ以上進んで宙理的に不案内な帝国領に入ればミイラ取りがミイラになるのがオチなのは明らかであったのだ。

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