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alone 49=ありがとう=

[388]  兼古 朝知  2010-04-15投稿


「水鶴様、もう平気で…す。戦え…ます」

圭の言葉に、今まで呆けていた皆神の兵が身構えた。

「本当にか?」

水鶴が念を押して聞く。

「はい。…ただ――」

「何だ?」

「俺を残し…て、ここから離れていただけません…か…?」

「…!!」

水鶴は圭の胸中を察した。これだけ出血が酷いのだ。陣に連れ帰ったとしても、圭が助かる確率は非常に低い。

しかし…

「…駄目だ!!」

水鶴は首を盾には振らなかった。

「水鶴様、俺は…もう」

「言うな言うな!!ふざけるなよ!勝手に死ぬのは許さんぞ!!」

口調こそ強いものの、圭に すがるようにして言う姿は、ただの年相応の少女のようだった。

「どうして…」

そんな水鶴を見ながら、晶は そうこぼした。

「人を失う苦しみがお前にもあるなら、どうして…どうして人を簡単に殺せるんだ!?」

「……!!」

晶の問いに、水鶴は答えなかった。その代わりに、圭が口を開いた。

「黙…れ…!!」

ごほッと圭が咳を一つすると、多量の血が同時に吐かれた。

「げほっ…お前、に…ッ、お前に水鶴様の何がわか…る…!?」

息は荒く、どこからどう見ても死にかけの圭。

「水鶴様、行ってくださ…い」

「柊…私に命令する気か…?」

「申し訳ありませ…ん。しかし、お願いいたし…ます…ゴホッ」

圭は意思の強い目で水鶴を見る。

「…お前がいなかったら…私は、私は…!!」

「水鶴様…」

圭は、ゆっくり 諭すように言う。

「俺は…
この左手が鎌で良かったと思っていま…す。
だから…
この左手であなた様を護らせてくだ…さい。
あなた様が無事ならば…俺は幸せなんで…す」

「左手…」

「さぁ、水鶴…様」

圭は水鶴の背を優しく押した。

「あなた様に仕える事ができて…本当に良かったで…す。ありがとうございま…した、水鶴様」

振り返った水鶴に、圭は笑いかけた。
優しい笑みだった。

「柊…ありがとう、ありがとう…!!」

水鶴は頷き、走り去っていった。



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