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alone 53=昔話(side圭?)=

[372]  兼古 朝知  2010-04-17投稿


「え…?」

水鶴は、音をたてて目の前に転がったものを、ポカンと見ていた。
そこにあるのは、剣。

「理一さん!?」

菊乃が二・三歩後退して、叫ぶ。

「え?え?母上を、その剣で…?」

水鶴はオロオロして言っていると、兵のうちの一人が理一の前に出た。

「きょっ、教祖様!!奥方様を水鶴様に殺させるとは何をお考えですか!?」

「…私に逆らうか?」

理一が不敵な笑みを浮かべると、その兵の首がゴロリと落ちた。

「――ッ!?」

水鶴が口を手で覆って後ずさった。

兵の首を斬ったのは、東吾だった。

「申し訳ありません教祖様。続けて下さいませ」

東吾は そう言うと、死体と首を持って去っていった。

「さぁ水鶴、やってみなさい」

「…!!」

水鶴は、理一と菊乃を交互に見やった。

「わ、私…!!」

「うん?」

「私にはできません…!!母上を、殺せません…」

水鶴は涙目で言った。
理一にここまで恐怖を抱いたことの無かった水鶴は、ガタガタと震えていた。

「そうか…『駄目な子』だな、水鶴」

理一は水鶴の前に ゆらりと立った。

「理一さんッやめて!!」

菊乃が理一に叫ぶ。

「殺しは せんさ…。嘘つきには罰が必要だろう」

――バキッ!!

生々しい音が辺りに響く。菊乃は思わず目を瞑った。

「…!!」

理一は目を丸くした。

殴られ、口の端から血を流しているのは娘ではなく、圭だったからだ。


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