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alone 54=昔話(side圭?)=

[366]  兼古 朝知  2010-04-17投稿


「……」

圭は何も言わず、キッと理一を睨む。

「生意気な子供だな。柊の子とは思えないくらいだ」

ニィと口角を上げ、理一は笑った。

「よしてよ、柊!」

水鶴が圭に触れようとした時だった。

「圭いぃぃ!!貴様あぁああぁぁ!!」

東吾の怒鳴り声が辺りに響いた。刀を持った東吾が圭に襲いかかる。

圭は動かなかった。

――ザクッ!!…ドサッ…

圭の左腕が、肘の先から斬り落とされた。

「柊ぃッ!!」

「……ぅ…!!」

圭は小さく呻いたが、変わらず理一を睨んだ。
水鶴が圭の肩を掴み、もうよせと言う。

「目だけは一人前だな。水鶴を護ろうとする気持ちは強いようだ」

理一は嘲笑うのようにして笑う。

「父上ッ!柊を、柊を殺さないで!!」

水鶴の懇願に、理一は温度の無い目つきで返答した。

「では選びなさい。ここで柊の息子が殺されるのを傍観するか、母上を己の手で殺すか…」

「そん…な…!!」

渡された剣を持つ水鶴の手が、ガクガク震えている。

「…水鶴!!」

「!!」

菊乃が水鶴の名を呼ぶ。
水鶴はビクッとして振り向いた。

「は はう え…」

「私を…母を、殺しなさい…!!」

菊乃は己の死を覚悟した。そして水鶴に歩み寄っていく。

「圭君が殺されてもいいの…!?」

「だって母上…」

「私は十分に生きた…。大丈夫…恨みなんかしないわ。大切な一人娘だもの」

(やだ。

柊を失うのも、

母上を失うのも。

嫌だ嫌だ嫌だ。

でもこのままじゃ柊が。

でも母上を。

父上を裏切る?

どれも嫌だ。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!)

「ぅわぁああぁあああぁぁあぁああ!!」


――ドスッ!!




水鶴は…



菊乃を、刺した。

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