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幸運の女神-第二部 4

[542]  朝倉令  2006-08-24投稿


「倉沢くん、ちょっと付き合ってくれないかしら?」

「え、別に構いませんが。…なんですか、一体?」



閉店後に俺、倉沢諒司はコルスの店長である手島美和からお誘いを受け、多少の戸惑いを覚えていた。


(いつもの『諒司くぅ〜ん』じゃねーな…)


「そんなに警戒しなくても平気よ、ウフフ。 ただ、お話があるだけなの」


「…じゃ、聞かせて貰う事にします」



俺たちは、美和のBMWでコルスを後にした。






「あら?どうしたの、居心地の悪そうな顔をして」


「いやぁ… こんなお店なんてビンボー人には縁がないもんで」



手島美和に連れて来られたのはヴァン・ロゼという会員制の高級クラブである。


彼女は水を得た魚の様に自然に振る舞い、実に落ち着き払った態度でいた。



「ここなら、呼ぶまで誰も来ないわ。
話の邪魔される心配はないって訳、ウフフ」


「ところで、話って何ですか? …サボリも遅刻もないと思いましたけど……」


「それは柿崎くん達の得意ワザでしょ?
今日はアナタと恵利花さんの事なのよ」

「俺達の?……」



美和は、答える代わりに俺の目を深い色合いの瞳で覗き込み、艶然と微笑んだ。


日本人離れした彫りの深い美貌と相まって、ちょっとゾクゾクさせられる。



「アナタ達は滅多にお目にかかれない組み合わせよね。 それに、最高のタイミングで彼女の前に現れたのもアナタよ、ウフフ…」


「へ?現れたって言うんならエリカの方ですよ。
インパクト大だったし…」


「いいえ、アナタが恵利花さんの《運命》を変えて救ったのよ」


「救った?…」



いぶかる俺に、手島美和は驚愕すべき事を語った。





「そう。  …彼女、本来は二十歳前にこの世を去る運命だったのよ」

「何ですって!?」



俺は、弾かれる様にソファから立ち上がっていた。





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