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精霊召喚-5

[1420]  ハッタリ野郎  2005-02-28投稿
 終わりだ、精霊は絶望した。精霊ともあろう者が絶望している。本当に大変なことが起ころうとしている。
 その間にとうとう津名は、さっきの塩酸で焼け爛れた美佐代の腕にカッターナイフを突き刺した。
「ほらどうした? 痛がってみろよ。」
その間、津名の後ろにいる女子生徒のうち1人が後ずさりしていた。津名はそれに気付いた。
「怖いのか? お楽しみはこれからなんだぞ。」
津名の表情はさっきまでとは全然違う。
「さあて、てめえの骨でも見せてもらおうかな。」
津名はカッターナイフで美佐代の身をえぐり出した。そのとき、美佐代の表情が一変した。そして辺りに大声が響いた。
「ぎゃああ!!」
美佐代は般若の面相になっていた。精霊の絶望が完璧な恐怖へと変わってゆく。もう終わってしまう。
「幻・・・魔・・・。」
美佐代は何度もその言葉を繰り返した。津名は美佐代からカッターナイフを抜いて後ずさりした。
「なんで、てめえは一体・・・。」
さっきまで美佐代が負っていた全ての傷が治ってゆく。そして恐怖が訪れた。
「幻魔・・・召喚!!!」
美佐代がそう叫ぶと同時に津名の左胸は吹き飛んだ。そして津名の後ろでは、吹き飛ばされた津名の心臓が意味もなく動いていた。それを目の当たりにした他の女子生徒たちは気が狂ったように叫んだ。しかし、それもすぐに消えた。女子生徒の頭が粉砕されたからだ。辺りに女子生徒の脳が散らばる。
「ああ、あが・・・!!!」
再び叫び声が辺りに響く。その間についに悪魔が姿を現し、残った女子生徒を握りつぶそうとした。美佐代は気絶しているようだったが、なぜか立ったままだった。さらに恐ろしいことに、その悪魔は美佐代の体から出てきていた。
 もう止められない。美佐代の幻魔が解放された。実は美佐代は行方不明になっている間、魔界へ連れ去られていたのである。そして彼女の体は、いや心はずたずたに引き裂かれていて、その心の狭間に悪魔が入り込み、現実世界へ帰還したときにはそれは幻魔となって美佐代の体に残ったのだ。
 ドタッ、という音がして津名が倒れた。今の今まで自分の心臓がなくなっていることに気が付かなかったみたいである。そして津名は今、計り知れないショックのあまり、息絶えた。それとほぼ同時に、体の外に出ている津名の心臓は、その無意味な動きを止めた。
 グシャッ! 続けて、あまりに不快な音と共に残った女子生徒の体は握りつぶされた。

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