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alone 59=本音=

[395]  兼古 朝知  2010-04-21投稿


「水鶴ッ!!」

陣から出てきた水鶴に、晶は声をかけた。

「…柊は?」

晶に一切目を合わせず、水鶴は問うた。
屋内に今まで入っていて少し乾いた髪が、降りしきる雨によって また濡らされていく。

「……死んだ。俺が、俺が…殺した…」

晶は目を伏せて言う。

「いいさ、別に。戦争に死人は付き物だ」

水鶴は無表情で言う。

「嘘だ!!」

晶が否定した。

「何が嘘だ!?死人の出ない戦争が何処にある!?」

「俺が言ってるのはそれじゃない!圭が死んだのに“別にいい”って言った事に、俺は嘘だっつったんだ!!」

「嘘じゃない!!私は、私は本心で言ったんだ!!」

「本心で言う奴はそんな顔しねぇから言ってんだよ!!言えよ!圭を殺した俺が憎いって言えよ!」

「違う!違う!!違う!!!
私は父上に開発されたただの殺人鬼だ!!
はじめから!私は独りきりだったんだ!!
今さら寂しくとも思わないし、悲しみなんて感じないんだ!!」

「じゃあ お前は何で泣いてんだ!?」

「!!」

ひとしきり言い合いをした後、晶に言われた水鶴は目を擦った。
そこには雨にしては熱い、水滴があった。

「雨だ…!!これは雨だ!!誰が泣くものか!!」

「何でだよ!?何で本音で話してくれねぇんだよ!?
なぁ!?」

「うるさい!!…せるものか…!!柊以外に、本音で話せるものか!!」

「…!!」

やっと顔を出した水鶴の本音。
圭が いかに水鶴にとって大きな存在であったか、判断するには十分すぎるほどの発言。

――ザァァァァァ…

晶が黙ったことで、辺りには雨の音しか響かなくなった。

水鶴は じっと晶が何か言うのを待っていた。

「…なぁ水鶴」

「何だ…」

「にーちゃん、好きだった?」

「…いい兄さんだった」

「…俺は どうだった?」

「いい友達だった」

「…俺はな、」

「何だ?」

「今でも お前の事友達だと思ってる」

「……」

「独りきりになんか俺がさせねーよ」

「…言ってろ、馬鹿」

水鶴は、晶の横を通りすぎた。

「水鶴!!」

晶は水鶴の背に呼びかけた。すると水鶴は立ち止まり、振り返った。

「…俺も独りだった」

晶が苦笑いをしつつ、言った。

「……そうか」


水鶴は、切なそうに…


笑った。



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