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子供のセカイ。163

[377]  アンヌ  2010-04-21投稿
長身の男は、灰色のマントにすっぽりと身を包んでいた。暗がりの中でもわかる、小麦色をした絹のように滑らかな長い髪。細い顎を誇示するように顔を高く上げ、青い瞳でこちらを見下ろしている。
その残忍そうな光を宿した瞳を見た途端、耕太の中で数日前の記憶が、鮮明にフラッシュバックした。
「……!」
それが「誰」であるのか認識した途端、心臓に触れられたような冷たい恐怖に捕らわれ、耕太はぴくりとも動けなくなった。
それは、絶対にここにいてはいけないはずの人物だった。“真セカイ”の神社の石段で一度会ったきりだが、忘れられるはずがない。その時、危うく耕太は殺されかけたのだ。
時間が凍りついた。それは一秒か二秒か、ほんのわずかな時間のはずだったが、耕太には永遠に思えた。
男がわずかに身じろぎした。その瞬間、金縛りに合ったようになっていた体が、急に動くようになった。
「戻れ、美香!」
耕太はまだ大通りに出たばかりの美香の肩を押して、細道に押し戻そうとした。しかし、美香もまた彼の姿に目を留めると、大きく目を見開いたままその場に固まってしまった。
「覇王…!?」
「久しぶりだな、小娘。」
舞子の側近にして、美香にとって最大の敵――覇王は不敵に微笑むと、こちらに向かって一直線に走り出した。走りながら細身の剣を抜き放つ。その姿はぐんぐん大きくなり、あっという間に美香に肉薄した。
耕太は美香の前に飛び出した。さらにその前に、一見立ち塞がってもどうにもならなそうな、小さな子供の外見をしたミルバが走り出る。
覇王はミルバの姿に目を留めると、醜い形相をむき出しにして唸った。美香に向けられていた切っ先が、なぜかミルバへと標的を変える。
剣がミルバに向かって袈裟斬りに斬り下ろされた。美香は思わず悲鳴を上げた。
ミルバは何もしなかった。ただ、上から落ちてくる鋭い切っ先をぼんやりと見上げると、急に切なげに顔を歪め、ごく小さな声で囁いた。
「あなたを狂わせることを、申し訳なく思う。」


……………………………


「あ?」
小走りに走りながら、耕太は思わず呟いた。足が勝手に走っていた。建物や道の連なる景色は、田舎と都会の中間くらいの風景に変わっていた。
――否、戻っていた。
思わず立ち止まると、後ろにいた美香もまた気配で立ち止まったのがわかった。

感想

  • 37404: 見させてもらってます。もうちょと面白くしてください。 [2011-01-16]
  • 37416: すみません…。ですが、もうこの後の展開は決定済みなので [2011-01-16]
  • 37417: 変えられません。それがお気に召せばよいのですが……。アンヌ [2011-01-16]

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