言えないバイバイ 10話 (全10話) 現実
――さよならの日
あいつの周りにはたくさんの人。
うちは一人、ぼんやりするばかり。
そして―\r
「ゆき、俺…そろそろ行くな」
「え…もう?」
「…うん。」
背を向け歩きだすこうた。
そんなあいつに手を振る皆。
うちは何もできずつっ立ったまま。
弱気なうちにはやたらと強くなる友人は、背中を押して欲しい時に限っておらん。
人を見送るのってこんなに悲しかったっけ?
もしここで、“好き”の一言でも言ってしまえば、うちは皆の笑い者。
そんな恥、捨てれたらいいのに。
だんだん離れるあいつ。
あかん
「待って!」
皆から離れて、あいつに駆け寄る。
「?」
「あの、いっぱいごめん!…それから…」
きっと今のうちの顔、最悪。
「…ありがとう」
その言葉が精一杯やった。
あいつは“こちらこそ”って笑ってた。
結局臆病なうちは好きもバイバイも言えなかった。
ただ、二人はまたねって手を振った。
うちはもっと強くなる。
そして、今度はきっと伝えてやる。絶対に。
次会った時、もし彼女が出来てたら悲しいけど、でも、うち以外にあんな奴好きになる人、きっとおらん!
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