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ミットに向かって-7-

[676]  沢村エイジ  2010-04-23投稿
先発の真野先輩は初回から全力投球をして、刻士舘打線を押さえている。

初回から全力投球などをしたら、大抵のピッチャーは5回、6回で投げられなくなってしまう。真野先輩も例外ではない。

しかし、今の昂南には心強いピッチャーがもう一人いた。今年の大会から飛び入り参加した光だ。

真野先輩は"たとえ自分が投げられなくなっても、光が投げきってくれる"そんな思いを胸に投げていた。
回は進み6回、刻士舘高校の攻撃。いまだに0対0という接戦を繰り広げていた。
しかし6回の表、真野先輩が2人連続でフォアボールで塁に出してしまった。

それを見て、監督が動いた。
「ピッチャー交代、神山」

神山がブルペンから走りだす。そして、マウンドで真野先輩からボールを受け取とった。

「俺達の3年間、お前に託すぜ?」
「えっ!?」
「おもいっきり投げろ」
そう言ってからベンチに走っていった。
光は呆気にとられている。
「おい!早く投げろ」
武司に催促され、光はマウンドに立った。投球練習の7球を投げ終え、周りを見渡すと、3年生達が真剣な眼をしているのが分かる。
光は深呼吸をしてから腕を振り上げた。

腕から放たれた白球は唸りをあげてミットに突き刺さった。

試合は進み、粘り強いバッティングで昂南は一点を奪うと、全力で死守していた。
エラーは一つだけで、いつもよりも少ない。エラーは2、3個が当たり前のチームだったからピッチャーとしては大助かりだった。

そして、いよいよ最終回。刻士舘高校、打順良く1番からの攻撃。

さすがに打撃力は有り、1,2番はライト前とセンター前のヒットで、ランナー1,2塁。
3番バッターにシュートを使い、セカンドゴロにして、ダブルプレー。

そして、2アウト、ランナー3塁、4番バッター。

"このバッターをアウトに出来れば甲子園出場が決まる"
光の胸はいつになく高鳴っていた。

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