alone 69=どんな人間だとしても=
「死んだ、死んだぞ!!」
「終わったんだ…!」
「戦争は もう終わったんだ!!」
眼下で歓声が上がる中…
「父上…。
忘れるはずが、
無いでしょう…
あなたがどんな人間であったとしても…
私の父上であるのから…!!」
水鶴は、うずくまって泣いた。流した涙は、雨の中に消えていく。
「…水鶴ちゃん」
皆神の教祖が水鶴に声をかけると、水鶴は ゆっくりと振り返った。
「よく、頑張ったね」
「ええ…」
水鶴は立ち上がり、言葉を続けた。
「父は…私が情けをかけて殺さないように…あの言葉を発したわけでは無いのでしょう…」
「…そうだね。
ただの、本心だろうね」
水鶴が涙を拭いて ふと見ると、自分ののぼってきた梯子に晶の姿があった。その後ろには夕の姿も見られた。
「晶…と……?」
夕の名前を知らないため、水鶴が言葉を紡げないでいると、夕が
「樋口 夕。夕方の夕って書いて、ユウって読むのよ」
「そうか…」
水鶴は目を伏せた。
皆神に帰順してから、晶と教祖以外とは殆ど話していないため、どうすればいいかわからないからだ。
「あたし、あなたとは まだ仲良く出来そうにないわ」
夕がキッパリと言う。
「な、何でだよ!?」
梯子をのぼりきった晶が夕に問う。
「一番の部下の墓くらい、詣ってきたらどう?」
「…柊の?」
一番の部下と言われ、瞬時に水鶴の頭の中には圭の顔が浮かぶ。
「いつか あなたが晶に傷を負わせたでしょう?
その場所に彼がいたから、墓をつくったの」
「夕がつくったのか?」
水鶴の問いに、目をそむけて夕が答えた。
「あんな粗末で良かったらね。不器用すぎて自分が嫌になるくらいよ」
「どこにつくった…?」
「陣の外。すぐそこよ」
言われた直後、水鶴はフワリと塔を飛び降りた。
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