携帯小説!(PC版)

無題

[349]  2010-04-27投稿
石の外階段を
上っていくと

小さな
中庭に出た


人の手が入っていない様子で

木々はすき放題に枝葉を伸ばしているし

雑草やら何やら
生い茂っている


そこで
彼女は眠っていた


「眠り姫」にしては とうが立っているな

けれど
吹き上げてくる
風に

黒い睫毛も
黒い髪も
日焼けした肌も

無防備にさらして
気持ち良さそうに
眠っている姿は
野生の獣の様で

美しい


「ライオンが昼寝しているようだ」


獣を起こさないように
彼女の傍らに
そっと
腰を下ろした。


このあたりの風は 砂漠の匂いがする


エアフィールドも 手薄な様だ


何か
黄色いものが

自分と彼女に降り注ぐのに気付く

見上げると
アカシアの大きな木があった


アカシア


子供の頃

家族とアフリカ旅行へ行ったことがある

あの時は
厳しい父親も
上機嫌だった


まだ
原生のサバンナを見に行った


大きなアカシアの木々の近くに

キリンの群れと

猿の群れがいた

アカシアの花が

大きなキリンにも
小さな猿にも
降り注いでいたっけ


美しい光景というものに
初めて出会った気がした

あの
猿は何という種類なのかな


小さな猿が
降り注ぐアカシアを見上げてい


猿はアカシアをまるで愛していた


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