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航宙機動部隊第四章・23

[521]  まっかつ改  2010-04-28投稿
少年が自ら門扉を開くと、そこには敷き詰められた玉砂利を挟んで母屋らしき茅葺きの建物がそびえていた。
玉砂利の海の中、ぽつんぽつんと置かれている踏み石を伝って、少年はそこに向かおうとする。
ジョウァンナ=バウセメロは意を決してその後に続いた。
母屋の入口までたどり着いた少年は、ジョウァンナを振り返り、
『さて、ここでなら話が出来ますね』
言いながら障子張りのスライドドアに手をかける。
母屋の中にはやや高い段差が有って、その上には一面に畳が乗せられている。
こんな部屋をみたのはジョウァンナは初めてだった。
『あ、紹介が遅れましたね―私は共和国宙邦の最外縁総領事を務めているリク=ウル=カルンダハラと申します』
黒髪の少年は靴を脱いで上がりながら、畳へと足を進めた。
ぎこちなくそれに倣いながら、
『私はパレオス中央通信社人権・社会部記者、ジョウァンナ=バウセメロと言います』
彼女は胸の記者章を若き総領事に向けて引っ張って見せた。
申し合わせたかの様に二人は襖で仕切られた六畳部屋のほぼ中央に向い合わせで座り―\r
『早速ですが、何故私を助けたのですか?その理由は?動機は?目的は?』
矢継ぎ早の質問責めを繰り出しつつジョウァンナは思わず赤面した。
どうも職業病と言うのはこの場合呪われるべき物らしい。
それには大して気も止めない様子でリク=ウル=カルンダハラは木目天井を見上げながら指先で鼻をぽりぽりと掻いて、
『仲間―ですかね』
ジョウァンナは面食らった表情をした。
『初対面でいきなり(仲間)と来ましたか。たったそれだけの訳で私を助けたと?』
大体二人の間には仲間は愚か知り合いとすら呼べる縁など無かったではないか。
するとリクは胡座を組み直し、
『貴方は太子党を敵だと言った』
ジョウァンナはそれを聞いて頷いた。
『実は私も―なのですよ』
少年の打ち明けに、敏腕女性記者は顔を輝かせた。
どうやら幾つもの僥幸が纏めて降って来たらしい。
『それに、私もだけではない―もう一人連れがいましてね。彼女も心は同じです』
その役職は副領事、と告げられてジョウァンナは驚きの声を上げた。
『私の方から頼みます―我々の仲間になって欲しい。太子党と対決するには貴方の力は是非とも必要なのです』
総領事の申し出を断る理由などジョウァンナには無かった。

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