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航宙機動部隊第四章・29

[541]  まっかつ改  2010-05-05投稿
そこへ、酩酊した二人の士官が肩を組み合いながらリク=ウル=カルンダハラ達の丸テーブルすぐそばを通り―過ぎ去り際に軽く接触した。
ビールのジョッキや枝豆の乗った皿が微細な音を立てながら小刻みに回ったが、幸いどちらも無事ですんだ。
『ええと―失礼ですが少将閣下』
若き総領事はどちらかと言えばシンプルな組み合わせの階級章をよく見てから、相手の正確な位を当てると言う中々のセンスを示し、
『それは本人に言った方が宜しいんじゃないですか?』
すると、少将と呼ばれた女性はみるみる柳眉を逆立てた。
『あなたはパネルカードの着信履歴すらろくに見ないわけ!?』
そう言えば、太子党の件に巻き込まれてからリクは公人としての仕事は全くのすっぽかし状態。
連絡も取らないばかりか、同胞のテンペ=ホイフェ=クダグニン以外からの着信は一つ残らず出ない上に忘却の彼方に中ば強引に押しやる有り様だったのだ。
リクは急いでパネルカードをズボンのポケットから取り出し、最近の着信履歴を表示してみる。
すると近距離メールだけで一八件も貯まっていた。
言うまでもなく同じ発信元からだ。
気まずさと恥ずかしさと緊張から、汗の水滴浮かぶ鼻をぽりぽりとやるリクに向けて、
『私の名前はK=シャフラン。新編パレオス防衛軍司令官―あなたの上官よ』
溜め息混じりに真紅の髪の女性は自己紹介をして来た。

リクはすっかり忘れていたのだ。
パレオス星邦議長・ペアリーノ=グィッチャルディーニの防衛軍構想―合衆国連合艦隊から一部を再雇用してこの国初の宇宙艦隊を所持しようと言う計画を。
否、覚えてはいたのだがこれまでの政治的混乱で或いは雲散霧消してしまったのではないかと、思っていたのだ。
早い話が少年は見くびっていたのだ―議長や上層部の手腕ないしは執念を。
その時、ウェイターがやって来て、少将が注文した飲み物を丸テーブルに置いて立ち去って行った。
自身の頭髪と同じ色のカクテルらしきそれを手に取ってk=シャフランは、
『で、ここまで引っ張ってくれたからには何がしか奇策妙案の類は手持ちにあるのでしょうね、リク少佐?』

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