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航宙機動部隊第四章・33

[581]  まっかつ改  2010-05-09投稿
『その話をパレオス星民が聞いたら一体どう思うかしらね』
責める様な皮肉る様な晶子の口調にしかし、
『今更善人面した所で仕方なかろう―第一君だって一枚噛んでいるのだからな』
けんもほろろにエンリケは切り捨てた。
そして上体を思い切りソファーに押し付けながら両肘をその縁に預け、天井を見上げるかのようにして、
『そもそもこんな辺域まで星間軌道を伸ばしたのが間違いなのだよ。でなければ統合宇宙軍とて所詮は一軍閥に過ぎずに済んだのだ』
エンリケ=ガブリエルは息を継ぎながら足を組み換え、
『我々の使命はあくまでも中央域を守る事にある―その目的に適合するのならばいっそパレオスをくれてやっても良い位だ』
吸っていたストローから再び安史那晶子は口を放し、
『論理としては解るけど、勝手な話よね』
『勝手?何が勝手だ』
エンリケは心外そうに目を見開いた。
『こんな未開の宙域ごときに我が中央域を侵す力など持たれる方が余程勝手で理不尽な話だよ。私はね、安史那上級祭酒―ここの五十億星民が残らず殲滅されても中央域文明を軸とした秩序さえ維持出来ればそれで構わないと考えているのさ』
すると、晶子は飲み物にアルコールが入っていた分けでもないのにパタパタと片手で顔を扇ぎ出し、
『それは過激な発言ね―まあ、私も大筋では賛成だけど、確かに中央域三千億人士を守る為ならパレオス六千万星民に人柱になって貰う、両者を天秤にかければ結論は自ずから明らかね』
これが、彼等ユニバーサルエリートや宗教界の考えだった。
最外縁等中央域と比べればたかだか路傍の小石―下手すればそれ以下の価値すら見出だしてはいないのだ。
そして、本来なら擁護すべきパレオス星邦ですら、必要とあらば蜥蜴の尻尾の様に切り捨てる。
体温の喪失した打算と利害のみの世界がそこには広がっていた。
しかもその打算には消しがたい選民意識・中華思想がくどいまでの下味となって裏付けされている。
そして彼等はその論理に罪悪感所か疑問を感じる事すら無かったのだ。
飲み物をひとしきり処理し終えると、安史那晶子は漆黒の上衣を手にソファーから立ち上がり、
『さて、私はもう行きますわ。ここには別の辺境から来た珍しい少年少女がいるそうですから』
そう言うと、上衣を身に纏いながら歩み去って行った。

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