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子供のセカイ。168

[498]  アンヌ  2010-05-11投稿
「約束が違うじゃない!私、お姉ちゃんたちがラディスパークに入った時、言ったよね?絶対に殺してはダメだって。」
そう、舞子は結局そういう結論を出していた。捕まえて城の地下に閉じ込めるという結論を。それなら姉を殺さず、なおかつ邪魔されることなく目的を遂行できると、幼いなりに舞子が考え出した苦肉の策だった。
「ああ、そうだったね。忘れていた。」
悪びれた様子さえない覇王の態度に、舞子は息が苦しくなるような不安に駆られた。
「それで、見つかったの?」
「いや、僕の計算では、ある道に必ず現れるはずだったんだけど、どういうわけか来なかったんだ。」
そう、本当にどういうわけか。
覇王には確かな自信があった。治安部隊の失態を知り、直ぐ様夜羽部隊を放った。その内の一隊から、すでに美香と耕太発見の報告を受けていた。
夜羽部隊にも一応、美香の殲滅を命じてはいたが、ここまで辿り着いた彼らなら、きっとなんらかの運で逃げおおせるに違いない。そして覇王は、二人がコルニア城へ向かう場合、子供の足でも朝までに確実に至るであろう通りに立って待ち伏せしていたのだ。
その通りはぐるりと円環状にコルニア城を囲んでいる。道を間違えたか、途中で進行をやめたのならともかく、二人は夜羽部隊にコルニア城の方へ追い立てられていたはずである。それなのに、結局彼らは現れなかった。
途中で夜羽部隊からの連絡は途絶えている。これを吉報と取るならば、すでに美香は死んでいるはずだが、もし逆であれば――。
小さな緑の子供の姿が瞼の裏に浮かんで、覇王は舞子に見えぬところで奥歯を強く噛み締めた。
舞子は怪訝そうな顔をしている。
「何で、その道に現れることがわかったの?」
それも当然のことだった。舞子は夜羽部隊の派遣どころか、治安部隊が美香の仲間である二人の“子供のセカイ”の住人を捕らえたことさえ知らない。駒を動かしているのはすべて覇王である。舞子は覇王に言われるまま、覇王が望む強力な駒を、次々と生み出しているだけに過ぎないのだ。
「それは――」
何かうまく言い訳しようと口を開きかけたところで、天井付近でガシャンと何かが割れる音が響いた。
びくりと肩を上げた舞子が後ろを振り向くと、柱の向こうにある白い壁伝いに、バラバラとガラスの破片が降ってきていた。

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