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航宙機動部隊第四章・35

[605]  まっかつ改  2010-05-11投稿
だが、今は連中を泳がせているとのエグムント=ファルフナーの言葉を聞いて、リク=ウル=カルンダハラは納得しかねる様子を見せた。
『そんな悠長な―奴らみたいな人の皮被った化物共が毎日どれだけの生贄を喰らい尽くしているのか知ってて言っているのですか?』
リクは腹部奥深くに焼石を放り込まれたような怒気と焦慮にかられた。
確かにあながちこれは少年ゆえの純情さのせいばかりでは済まされない客観的事実が幾らでもあったのだ。
『これは捕り物ゲームなんかじゃあないんですよ。拘束出来るなら何故今すぐにやらないのです』
両手で畳を破らんばかりに鷲掴みしながらリクは迫った。
対して局地捜査官の側は若き総領事の態度に驚きも怒りも見せずに、
『確かに外堀は埋めたんだ―だがまだチェックメイトではない』
淡々とそう告げた。
その時、二輪式のサーバントマシーンが浮遊灯の光を浴びて銀色のボディを輝かせながら和式庭園を伝ってやって来て、二人に熱いお茶と菓子を進めて来た。
エグムントは遮熱陶磁をマシーンの抱える盆から手に取ると、それをふうふうしながら、
『今、パレオス警察及び司法省と接触している』
太子党と戦うには、現在の星間司憲のみでは不可能に近い。
何と言っても今ここにいるエグムント一人しか、正規の要員はいないのだから。
故に今回は特に地元からの協力なり援軍が必要なのだ。
ずずず、とお茶を飲んで、
『幸いパレオスサイドは太子党に反感を持っている―彼等が全面的なバックアップを約束してくれるのも時間の問題だろう』
言いながら、エグムントは今度は練り菓子を口に運び出した。
そして、
『いやいやバックアップ所か、率先してフーバー=エンジェルミ逮捕に動く気まんまんだったよ。下手をすれば我々の出番が無くなるかも知れないね』
満面の笑みを見せた。
局地捜査官は練り菓子を噛み砕きながら、引き続き説明を加えた。
パレオス星邦政府は今までの動乱の再来を恐れる余り、太子党を刺激する事を避けてきた事。
だがそれも、同国星民の世論に押され限界に達している事。
遂に星邦議長自ら太子党問題に決着をつけるべく指示を出した事。
その命に従い、司法省と警察が水面下ではかなりの所まで連中を追い詰めている事―\r
やるからには一網打尽を狙う。
今はその為の雌伏の期間なんだよ、と。

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