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航宙機動部隊第四章・44

[943]  まっかつ改  2010-05-22投稿
『まさか』
晶子は即座に否定した。
『あなた達の国に用があるなら直接そちらに向かっているわよ』
確かにリク等の祖国・共和国宙邦《グルン》も、大戦期に逆行した様な星民皆兵制を敷くわ、独自のスターレールや機動部隊は持つわ、挙げ句の果てには国家分割に応ぜずに公社軍と戦うわ、かなりやりたい放題な訳だが、彼女に託された使命の今回はどうやら埒外にあるみたいだった。
『そんな事より―リク総領事、よくあなたは助かったわねえ』
宗教界特務はやや切れ長の目を更に細めて感心して見せた。
『あなたも襲われた分けでしょう?フーバー=エンジェルミのメインターゲットは寧ろあなただった筈』
どうやってピンチを切り抜けたの?と聞かれて、少年は胸にぶら下がる黒翡翠を手にしながら、
『自分も良くは分かりませんが、どうやらこの宝石が守ってくれたみたいです』
小銃やハンドレイに撃たれた時、かすかに覚えているのは、このペンダントがいきなり輝き、自分の体を覆う様に放たれた白い光が、襲いかかるプラズマや破砕レーザーを中和するみたいに打ち消した、信じられない光景だった。
『ふうん』
その話を耳にして、晶子は座りながらやや深刻そうにリクの黒翡翠を眺めて腕を組み、
『あなたそれ―聖石よ』
思わぬ事実を告げた。
『素人に扱える代物じゃないんだけどね―逆に未経験者が下手に使えば、生体電磁力は暴走して死に至る筈なのにね』
言われたリクは鼻白んだ。
どうやら彼が今こうして生きているのは、幾多の奇跡と言う見えざる手の織り成した産物であるらしい。
だが、晶子は意外にあっさりとこの話題は切り上げ、
『まあそれより、私はあなた達の協力を要請したいのだけど、宜しいかしら』
協力とは?とリクに尋ねられて、彼女は秘密を共有したがる子供の様な微笑を浮かべ、
『私の任務はさっき説明した通り―で、あなた達は太子党と対決したがっている』
そしてリクに向けて膝を乗り出し、
『お互いパレオス星邦に用があるって事じゃない?だったらその点で手を組み合えると思うんだけど』
『確かにこちらも宗教界の支援があった方が何かとやりやすくはなりますが』
言いながらリクはテンペとジョヴァンナ=バウセメロに順番に目を向けた。
二人とも軽く頷く事で賛意を示している。

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