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航宙機動部隊第四章・45

[947]  まっかつ改  2010-05-23投稿
『時に思いだしましたが』
リク=ウル=カルンダハラには少なからぬ事情があった。
『自分は新編パレオス防衛軍の幕僚となっておりまして、残念ながらこれ以上フーバー=エンジェルミ追求に専念出来ません』
恐らくはアリ=アリアンス宙沖が主戦場になるであろう敵味方の主力部隊の衝突に備えて、結成間もない防衛軍司令部に彼は参加しなければならない身であった。
一時は黙殺しようかとすら考えもした少年ではあったが、鋭敏な宙際政治センスと最低限の責任感とがそれに否を告げていたのだ。
まあ仮に連合艦隊が勝てば良し―その暁には存在意義の七割は喪失するであろう同軍司令部から暇をもらう事も出来るかも知れないし、万が一負ければ文字通りこの国を守る同軍は最後の砦の役を担う分けで、それを見棄てて逃げ出す分けにもいかぬだろうと、彼なりには考えていたのだ。
若き総領事は傍らに座るテンペ=ホイフェ=クダグニンに向き直り、
『そこでこの役目、副領事に引き継いでもらいたい』
『私が!?』
この年でまだ十六にしかならない、若い所か幼さすら残る副領事は、驚きに両目を見開く。
『今我が陣営で頼めるのはお前しか居ないし』
だが、これまでの言動に照らし合わせて、リクは彼女に信用するに足るだけの物を見出だしていた。
『これだけ仲間が集まったんだ―今更解散と言う分けにも行かないしな』
テンペは提案の意外さに驚きこそしたが、その覚悟なり意地が揺らいだ分けが無く、寧ろ踏ん切りが付いた様子で、
『分かったわ―これからは私が太子党を叩き潰す』
その美貌に覇気をみなぎらせた。
『じゃあ、私はこのお嬢さんに付いていけばいいのね』
安史那晶子は両手で漆黒の上絹の襟を整えながら、
『取り敢えず護衛役でも務めさせてもらうわ』
『パレオス星邦をここまで腐らせたフーバー=エンジェルミ』
ジョヴァンナ=バウセメロは片手で畳の縁を握り締め、
『そいつ等をどうにかしてくれると言うのなら、私は誰にでも従うわ』
決して大きくは無かったが、その声から滲む気迫に一同は息を飲んだ。
思えばここにいる誰よりもその思いは強く深かっただろう。
今この瞬間も祖国を踏み荒らされている彼女と比べれば、リク達は所詮は異邦人だったのだから―\r

ここにテンペは反太子党の新盟主として、彼等との闘争の主役となる事となった。

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