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子供のセカイ。173

[573]  アンヌ  2010-05-30投稿
美香と耕太は一階の居間で、複雑な思いで顔を見合わせていた。
そこは紛れもなく美香の家だった。家中くまなく回って確認したのだから、間違いない。
美香の記憶の限り、家の中は大体本物の家と同じ状態だった。綺麗に片づけられた居間のテーブルや、ソファーに置かれている綿のはみ出したクッション。ラックに山積みにされた新聞紙。
二階の美香と舞子の部屋は、少し散らかっていたが、それも見慣れた風景だ。二段ベッドの上の段の毛布はきちんと畳まれ、下の段の毛布は足元の方にぐちゃぐちゃにかたまっている。上は美香が、下は普段舞子が使っている。
しかし、そのどこにも舞子の姿はなかった。舞子といっても、小学三年生の舞子の姿を借りた、舞子の魂の分け身にすぎないのだが。
美香はほっとしたような、がっかりしたような、もどかしい気持ちだった。
耕太はどっかりと椅子に腰を下ろし、美香はソファーにもたれかかった。落胆し、疲れきった様子の二人に、ミルバは珍しく気を遣っているのか、柔らかな声音で言った。
「ここなら安全だ。舞子は自分の魂の分け身の存在を知らないし、覇王にもこの場所の情報は漏れていない。二人とも、安心して休んでくれ。」
耕太が大きく息を吐き出しながら、溜め息に乗せるようにして呟いた。
「でも、何で知らないのかな?自分のことなら自分が一番よく知ってるんじゃないか?」
「いや、人間、見たくないものには目をつぶるものだよ。魂の分け身は、“子供のセカイ”にどっぷり浸かっている光の子供のみが持つものだから、ある意味、“真セカイ”でうまく生きれていない証だ。そこまで難しいことはわからなくても、自分の心の映し鏡なんかない方がいいと、無意識に避けてしまうのが普通だろう。幼い舞子でも本能的に目を背けているんだと思うよ。」
美香はむっつりと押し黙っていた。久々に我が家の匂いに包まれ、安心した部分も確かにあるのだが、それにしても気がかりだ。
「……それで、舞子の魂の分け身はどこにいるのかしら?」
ミルバは肩をすくめた。
「さあね。もしかしたら、私たちが来るのをどこかから見ていて、鉢合わせしないように逃げ出したんじゃないか?」
「……。そうかもね。」
ぐっと顔を歪めた美香を横目に見ながら、それでも耕太は遠慮なく大きな欠伸をした。

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