時代(とき)を超えた青春*二人
夕方の帰り道。彩はただ茫然と歩いていた。知らぬ間には瞳に涙が溜っていた。「彩さん―!奇遇だな」後ろから声をかけて来たのは悌次郎だった。「て、悌次郎君…」彩は慌てて涙を拭った。「泣いていたのか―?」「ううん、別に…」悌次郎は心配げに彩を見る。やがて、切り出した。「腹、空いたか?」「えっ…?」「ほら、行くぞ」悌次郎は彩の手をぐいっと引っ張った。(温かい手…) 悌次郎が彩を連れて来たのは、伊勢屋と言う茶屋だった。悌次郎と彩は、長椅子に二人で腰かけた。「…あの…あたし」「何がいいんだ?具合は大丈夫か?」「えっ、おごり?」「おごりって…何だ?俺が払うぞ。」悌次郎の顔は紅くなっていた。わざと彩から視線を反らしている。「じゃあ…田舎餅…」「俺も田舎餅にするか…ここの旨いからな」しばらく二人に沈黙が続いた。「あの…っ、本当に出陣しちゃうの…?」彩が問いかけた。「ああ…会津の為にな。」 「そう…」彩は悲しげに言った。すると、悌次郎はぎゅっと彩の手を握った。「心配なんかするな、俺達は大丈夫だ。何たって…会津武士だからな」優しく悌次郎は言い、彩の手をもっと強く握った。彩は心臓の鼓動が高鳴った。 (続編に続く)
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