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シークレット†ハート 6 (好き…だけど)

[422]  刹琉  2010-06-02投稿
「‥お兄ちゃん、お兄ちゃんってば…」

甘い声が、聞こえる。
甘えるように‥ちょっとだけ、ふくれたように。
俺を呼ぶ声。
毎朝俺を起こそうと、悪戦苦闘する俺の妹。
本当は、彼女が起こしに来る前に、いつも目は覚めている。
それでも起きないのは…寝たフリを続けているのは、ひとえに彼女に少しでも触れていたいが為。

「…ねぇ、お兄ちゃん…」

今朝も時間ギリギリに起こしに来た彼女。
困った様にウロウロ。

「っっっもぅっ知らないからねっっ!?」

――あぁ…とうとうヒス起こしたか………。
いつものように、俺をひと叩きして部屋を出て行く。
俺はベッドから起き上がり、こっそり笑いを噛み殺す。

「…知らないからね…か。知らないのはどっちだか……」

そう。
知らないのは彼女‥雪月花。
俺の本当の気持ちも、自分が今、どんな目で兄の俺に見られているのかも。

「…はぁ〜…ヤバい‥よなぁ…。あと少し。あと少し…来年の今頃は…」

独り言ちて、自分で落ち込む。
そう。
後、数ヶ月もすれば、俺も雪月花も受験一色になる。
夏が過ぎて、秋が来て、冬が来る。
来年春になれば、自然、別々の大学に進学。
そう決めて、今、頑張っている。

「雪月花の為だって、決めただろう………?」

自分に言い聞かせる様に呟いて……けれど、視線は未練がましく彼女の消えた、ドアの向こうを追い掛ける。

「女々しいったらないよなぁ…………」

……うわーーっ!と、声には出さずに髪をぐしゃぐしゃと両手で乱す。
はあ〜…と盛大な溜息を付き、ふ、と鏡を見ると、情けない顔をした自分がいる。
――知られたらいけない。知られたい。知ってほしい……。
毎日が想いの繰り返し。

愛しい…切ない…苦しい……苦しい苦しい苦しい。

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