シークレット†ハート 8 (好き…だけど)
「ねぇねぇ、セッカ。今晩の花火大会何着て来る?」
いつもの様にぼぅっと教室の窓の外の蒼い空を眺めていたら、ドシッと背中に初音ちゃんがのしかかる。
「お、お〜も〜い〜っ初音ちゃん、重いよぉっ」
「…むぅ…失礼な…」
初音ちゃんは「しょーがないなぁ」等と言って、私の背中から離れる。
ほっとして、改めて初音ちゃんに向き直ると私はちょっと考える。
「んー…どうしようかなぁ?初音ちゃんは?」
「私?私はもちろん浴衣!決まりでしょ!?花火だよ?夏祭りだよ?一年にこの時期しか着られないんだよ?そりゃーあなた、浴衣に決まり!それ以外有り得ない!」
絶対!と初音ちゃんは力説する。
−−ん〜…浴衣かぁ、でもなぁ…
ちらりとそんな事を考えた。
途端、初音ちゃんの目がキラーンと光る。
「セーツーカー?今、でもなぁ…なんて思ってなかったぁ?…デモもストもなぁいっ!せっかくの花火大会、楽しまなくてどうするのさっ!」
握りこぶしで前にも増した力説が始まる。
あ〜〜しまった…。
こうなると初音ちゃん、長いんだよね…。
「い〜い?セッカ!!夏祭りに浴衣を着ないでいつ着るって〜の?まして私達高3よ?これから長い長〜い間、受験なんていうとんでもなく面倒くさい道を走らなきゃいけない訳じゃない?なら今だけはそんな事気にしないで祭を楽しみたいじゃないっ!!それじゃなくても他にはな〜んの楽しみもない生活送ってんだから、少し位ハメ外したって…」
ずーっと初音ちゃんは話ている。
しかも浴衣の話から道が逸れている様な気がするのは私の気のせい…?
首を傾げてとりあえず「うんうん」と頷いておく。
−−はあぁ、いつ止めよう…
がっくりと肩を落とし掛けた時だった。
「雪月花、今日帰りちょっと待ってて。生徒会の報告書、先生に出したらもう終わりだからさ。今日で二学期も終わりだし、一緒に帰ろ?」
急に前の席からお兄ちゃんが振り返って、私に言った。
随分久しぶりの誘いだった。
「…うん…」
私はそうとだけ答えて、そっと後ろを向く。
…そこには、うっとり夢見心地の初音ちゃんがいた………。
感想
感想はありません。
「 刹琉 」の携帯小説
- 日常の風景 3
- シークレット†ハート13(好き…だけど)
- シークレット†ハート12(好き…だけど)
- シークレット†ハート11(好き…だけど)
- シークレット†ハート10 (好き…だけど)
- シークレット†ハート 9 (好き…だけど)
- シークレット†ハート 8 (好き…だけど)