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シークレット†ハート11(好き…だけど)

[434]  刹琉  2010-06-13投稿
《時間を遡る事、半日前…》

「なぁ、今日の花火大会の事なんだけどさー…」

窓の外から聞き覚えのある声が聞こえてくる。

「あぁ、今日だっけ?やっぱ橘誘う気か?」

何とは無しに聞こえた会話。
“橘”という名に、ぴくりと反応する。

「…やっぱさ、告ろうと思うんだ。俺達だっていつまでもこのままじゃいらんないし、もう少ししたら受験に向けてかなきゃならない訳だしさ。だったら今のウチに橘に考えて貰おうかと思ってさ…」

窓の外では、まだ会話が続いている。
開いていたファイルをパタンと閉じて、生徒会会長はそっと窓の外に視線を向ける。

−−あれは…同クラの田中と斎藤?

紙パックのジュースを飲みながら、田中は「そうか」と相槌をうつ。

−−て、事は告るっつってるのは斎藤か…

「とにかくさ、今日帰り際にでも彼女誘ってみるよ。花火大会行かないかって。動かなきゃ何も変わんねーし」

「そっか。まぁ、頑張れ。…会長には気をつけろよ?ちょっと噂、聞いてるし…」

田中はぽんと斎藤の肩を叩いた。
その様子を見ていた生徒会長…、疾風は冗談じゃないと思う。
自分以外の誰かが雪月花の隣に居るなんて、問題外だ。
自分の想いは伝えられない。
だったらせめて、傍にいる間は俺だけの妹でいてもらう……。
俺はそっと溜息をつく。
今までもそうしてきた。

「悪いけど…渡せない」
彼女に近づこうとするなら、徹底的に排除する。
キリ…と唇を噛み、生徒会室を出る。
足早に教室に戻ると雪月花が初音とじゃれているのを確認し、自分の席に座る。
…初音が騒いでいる声が耳に入ってくる。

「多少ハメ外したって罰当たんないわよっ!い〜い?とにかくねセッカ!祭りは浴衣!!相場が決まって……」

いつまで続くのか…。
そうしている内に田中と斎藤が戻ってきた。
まずい…俺はとっさに振り返り、「雪月花」と呼ぶ。

「今日一緒に帰ろ?」

彼女は「うん」と答えると初音に向き直る。
それを見ていたのは、俺だけじゃなかった。
斎藤、田中…。
悪いけど諦めてくれ。
出遅れた二人は顔を見合わせ、こっそり溜息をついた。

「そんな簡単に誘えると思うなよ」

ぼそりと呟く。
今はまだ、あいつは俺の物だ………。

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