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チンゲンサイ。<44>

[402]  麻呂  2010-06-15投稿

『さて。ここでみなさんに、ご紹介しておきます。

先ほどから、ここにいらっしゃる方は、山田ユウ君の御両親です。

これから、お母様の方から、みなさんにお話があるそうなので、みんなきちんと聞きましょう。』



不意に本橋が生徒達に向かって言い放つ。


そして、


その瞬間、教室全体から、ドッと笑いが沸き上がった。


その笑いが、一体何を意味するものなのかは、俺には分からなかったが、


その意味は考えるまでもなく、


今の若者の心の闇を、そのまま反映しているだけの、


さげすみの笑いなのだろう。


約80個の、その灰色に曇った瞳は、


まるで、俺達を嘲笑しているかの様に、

冷たく、太陽の光を反射していた。


俺の心配をよそに、その約80個の灰色の瞳に向かって、


ついにユキエが口を開いた。



『山田ユウの母です。

いつも、うちの息子が、みなさまに大変お世話になり、ありがとうございます。』



ユキエの第一声に、もちろん、生徒達の反応などなかった。

本橋は教壇の横に立ち、


俺は、教壇に立つユキエの後方で、その様子を見守る事にした。



『今日、みなさまに、ひとつだけ聞いて頂きたい事がありまして、

この場に立たせて頂いている次第でございます。』



ユキエのやつ――



こんな、じょうぜつだったのか?!


選挙演説じゃないのだから、要点をうまくまとめて話せよ!!



生徒達の視線が冷たく突き刺さる――



俺も口が上手い訳ではないが、


とにかく妻の事が心配で、無事に話し終える事だけを、心の中で願っていた。

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