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天使のすむ湖35

[311]  雪美  2006-08-28投稿
発熱してから、香里は三日間高熱が下がらず、下がったのは四日目に入ってからだった。俺は心配で傍に付きっ切りでいると、
「一樹、のどが渇いたわ。」
と香里が目を覚まし、俺は水のみで水を渡すと、体温を測った。
37.5℃だった。ほっと肩をなでおろし、
「気分はどう?だいぶ熱も下がったみたいだね。」
と香里に聞いてみた。
「だいぶ気分がいいのよー」
そう言って香里はからだを起こした。
「なんだか長い夢を見たわ、私が死のうとしたら、一樹が止めて、俺のために死なないでくれ、香里を失いたくない、悲しみも苦しみも辛さも一緒に背負うから、だから残された時間を俺に預けてくれって、言ったのよ。」
香里は現実だと思っていないのだ、
「それは、俺の本心だよ、香里を愛してるんだ、残された時間を俺に預けてほしい。」
もう一度俺が言うと、香里は嬉しそうに微笑んでうなづいた。そっと細くなった肩を抱きしめた。
「もう目を覚まさないのかと心配したよ、やっと半年振りに話せるようになったんだ、もう一度神様が、俺たちに時間をくれたんだ・・・」
俺は奇跡だと思った。思えば香里に出会ったことも、今この瞬間も奇跡の連続に感謝していた。
不幸な生い立ちの連続だった香里、神様がきっと香里の純粋な心に奇跡の瞬間を与えてくれたんだ、
「大切にすごそうな・・・」
そっとベットに香里は横たわり、
「うん、夢が覚めても一樹に会えて幸せよ・・・」
そう言って俺の手に頬をすり寄せてから、俺を引き寄せて頬に口付けた。

人は死を目の前にすると、神仏の存在を感じる瞬間があるという。
俺はその夜、神の存在を信じ、世界が美しく見えていた。あと余命がいくらあるのかはわからないけれど、せめて残された時間は後悔の無いようにすごしたいと思ったのだ。


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