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欲望という名のゲーム?5

[408]  矢口 沙緒  2010-06-22投稿



「とにかく、ここにいてもしょうがない。
中に入って弁護士の鹿島とかいう男に事情を聞いてみよう」
明彦は決心したようにそう言うと、正面のドアに近付いていった。
そして、そのドアの前まで来て立ち止まった。
「おいおい、こりゃなんの冗談だい」
呆れたような声を上げる。
それを聞いて、他の四人もドアのそばまで来た。
それまで気が付かなかったが、ドアに異様な物が下がっていた。
大きな分厚い木で出来た観音開きのニ枚ドアで、その両方のドアにそれは下がっていた。
大きさはちょうど人間の顔と同じ位で、鉄かなにかは分からないが黒い金属で出来ていて、厚みもかなりある。
彫金というのだろうか、とてもリアルな作りの笑った人間の顔なのである。
それが二つ、目の高さより少し上に、ドアのどちらの板にも下がっている。
「雅則兄さん…」
孝子がつぶやくように言った。
「確かにこれは兄貴の顔だが、いったいなんなんだこれは?」
明彦が深雪に聞いた。「あたしだって知らないわよ。
こんな不気味な物」
「何かのおまじないでしょうか?」
喜久雄が皆に尋ねる。
しかし、まともに答えられる者はいない。
皆一様に首を捻っている。
友子が恐々と指で押してみた。
「あら、これ意外と軽いわよ。
中は空洞なのね」
その時ドアのノブがガチャリと音をたてて回ったので、友子はビックリして後ずさった。
ギ、ギギーィ…
物々しい音をたてて、ドアがゆっくりと開いた。
中から大柄な男が顔を出した。
身長は百九十を少し越えているかもしれない。
しかも上背だけでなく、肩幅や胴回りもガッチリしていて、どちらかというと日本人離れした体格だ。
年齢は四十よりは上だが、五十には届いていないというところか。
髪をピッタリと撫で付けていて、銀縁の眼鏡を掛けている。
一見してかなりの紳士に見えるのは、その物静かで理知的な顔立ちと同時に、仕立てのよい高級スーツをさりげなく着こなしているそのセンスも一役かっている。
この男、弁護士の鹿島が五人を屋敷に招待したのだった。
「皆様、お着きでしたか」
鹿島は低いそして威厳を含んだ話し方をする男だった。
「遠いところをお疲れだったでしょう。
荷物は後で運ばせますから、どうぞ中へ」
そう言ってドアを大きく開けた。

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