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かけがえのないもの 2

[486]  デフレーター  2010-06-22投稿
「まあ…とりあえず、あがれよ」

「お邪魔しまーす」

隼人の言葉に被せるようにそう言うと、瑠奈はさっさと部屋にあがった。

「うわっ、お兄ちゃん散らかしすぎだよー。しょうがないなぁもう…」

瑠奈は隼人の部屋を見るなりてきぱきと片付けを始めた。

「自分でやるから大丈夫だよ。いきなり来るから片付ける暇なかったんだよ」

隼人が瑠奈を押し止めて部屋を片付ける。

ようやく2人くつろげるスペースが出来た。

「で?なんで急に来たの?」

飲み物をテーブルに並べ、隼人は真っすぐ瑠奈を見て尋ねた。

「うん。なんかいきなり会いたくなっちゃったんだ…」

瑠奈の表情はどこか悲しげだった。隼人は胸を衝かれる思いだった。

こんな瑠奈の表情を見るのは初めてだった。

それに…

「瑠奈…どうした?顔色悪いぞ?」

具合でも悪いのだろうか。瑠奈の顔色は少し青ざめているように思えた。

「え…?そ、そうかな?」

瑠奈は慌てたように笑顔を作る。明らかにおかしい。

「何があったんだ?急に来てみたり…会いたかったとか言ってみたり」

「いいじゃん!私はお兄ちゃんの妹なんだから、会いたい時に会いに来たっていいでしょ!?」

今度はすごい勢いで怒りはじめた。隼人は何も言えなくなった。

「あ…ごめんね、急に怒ったりして…でも…」

「いいよ。まあ詳しい話しは後にして…腹減ってないか?何か作るよ」

隼人はそう言うと立ち上がってキッチンへ向かった。

瑠奈が来た時は手料理を振る舞う。

隼人が自分自身で決めたルールだ。

「うん!メニューはお兄ちゃんに任せるよ。って言いたいとこだけど…」

瑠奈は隼人の方を見てにっこりと微笑んだ。

「オムライス食べたいな!お兄ちゃん特製のオムライス」

「へぇー…瑠奈からリクエストするって珍しいな」

隼人達の家は両親が共働きなのでいつも留守がちだった。

だから隼人は瑠奈の親がわりのような役割を担っていた。

瑠奈が隼人に懐いているのもそのためだった。

瑠奈は昔から隼人の作るオムライスが大好物だった。

リクエストを受けた隼人は嬉しい反面、どことなく不安な思いを抱き始めていた。



続く

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