欲望という名のゲーム?11
3
六時には全員が食堂のテーブルに着いていた。
細長い巨大なテーブルが、やはり細長い部屋の中央に重々しくあった。
テーブルの長いほうの辺に椅子が八脚づつ、そして短い辺に一脚づつ、合計で十八人が座れるように出来ている。
しかし、今はその端に五人分のナプキンとナイフ・フォーク類、それにスープ皿がセットされているだけだ。
そして奇妙な事に、もう一方のテーブルの端に、大画面のテレビモニターとビデオ装置が置かれている。
とりあえず明彦がテーブルの短い辺に一脚ある椅子に腰掛ける。
そして、その右に喜久雄と友子夫妻が、左に深雪と孝子が並んで座った。
明彦は長いテーブルを挟んで、テレビモニターと向かい合う形となった。
食堂が細長いために、天井には五つのシャンデリアが下がっていて、そのどれもが眩く光っていた。
両側面の壁には、絵画がずらっと並んでいる。
「ねぇ、あれ本物のユトリロよ」
孝子が絵の一枚を指差して深雪に言ったが、彼女は聞いていなかった。
彼女は食堂の入り口のドアに掛かっている金属製の笑い顔を見ていた。
それはどう考えても、この部屋とは不釣り合いに思えた。
奥の扉が開いて、鹿島がタキシード姿で出てきた。
その後ろからコック姿の小柄な初老の男と、そしてその男よりも小柄な、男と同年輩と思われるエプロン姿の女性が出てきた。
「紹介しておきましょう」
鹿島が後ろの二人を手で示した。
「こちらは牧野ご夫妻。
この屋敷の家事一切をまかなっております」
牧野夫妻はペコリと頭を下げた。
「何か御用がありましたら、遠慮なく私共にお申し付けください。
お部屋のインターホンは私共の部屋に繋がっておりますから…」
牧野はそれだけ言うとまた頭を下げ、そして奥に消えて行った。
牧野夫妻の後に付いて奥に行こうとした鹿島を、明彦が呼び止めた。
「おい、鹿島。
あのテレビは一体なんだ。
気になってしょうがない」
「ああ、あれは後でご説明いたします。
それよりも、こちらの料理はなかなかですよ。
では、食事の後で…」
そう言って奥に引っ込むのと入れ代わりに、牧野婦人がワインを持って出てきた。
料理は次から次へと運ばれてくる。
鹿島の言う通り、料理はどれも文句の付けようがなかった。
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