かけがえのないもの 6
「いいの…?」
瑠奈は手の中の鍵と隼人の顔を交互に見た。
「もちろん。いつでも歓迎するからさ。」
隼人は瑠奈の顔を見て優しく頷く。
瑠奈の表情がみるみる明るくなった。
「ありがとう!ちょくちょく遊びに行くね!」
「ただし、来るときは絶対連絡するんだぞ。色々、準備とかもあるから。」
「はーい!」
「父さんも母さんも…たまには様子見に来て。」
「ああ。」
「ご飯作って行くからね。」
「うん。じゃあ…行ってきます。」
父も母も目に涙を浮かべていた。
瑠奈はいつも通りの笑顔で隼人を見ていた。
「お兄ちゃーん!」
駅へ向かうバスの停留所の前で振り向くと、瑠奈が一心に手を振っていた。
隼人の姿を少しでも長く見ていたかったのだろう。
隼人は片手を挙げて応えた。
それでも隼人の心には
前夜の瑠奈の涙が焼き付いていた。
隼人が抱える不安は、自分がいなくなることで瑠奈が寂しさに耐えかねて良くない道へ進んでしまうのではないか、というものだった。
だから隼人は瑠奈が来るたびに何度も聞いた。
「寂しくないか?」と
瑠奈はその度に満面の笑みで否定する。
心配をし過ぎて瑠奈の笑顔を信じきれていない自分に
腹が立ってもいた。−−−
「お父さんも休みの日に色んなとこ連れてってくれるし、お母さんも前より側にいてくれる時間増えたもん。こうやってお兄ちゃんともお話しできるし、全然寂しくなんかないよ。」
「ならいいんだけど、ね。」
「お兄ちゃん心配し過ぎ。」
「だって…大切な妹だし。」
隼人はわざと小声で言った。
「ん?」
「なんでもない。」
「なにそれー!もう!」
「学校、うまくいってるのか?」
隼人は話しを逸らした。自分の言葉がなんだか恥ずかしかった。
「はぐらかされたぁ…うん。今ちょうど夏休み。友達と旅行行ってきたんだ。あ…お兄ちゃんにお土産。」
そういうと瑠奈は小さな箱を出してテーブルに置いた。
「お。何だろ。」
「食べ終わったら開けてみて。」
瑠奈は目を輝かせた。
続く
瑠奈は手の中の鍵と隼人の顔を交互に見た。
「もちろん。いつでも歓迎するからさ。」
隼人は瑠奈の顔を見て優しく頷く。
瑠奈の表情がみるみる明るくなった。
「ありがとう!ちょくちょく遊びに行くね!」
「ただし、来るときは絶対連絡するんだぞ。色々、準備とかもあるから。」
「はーい!」
「父さんも母さんも…たまには様子見に来て。」
「ああ。」
「ご飯作って行くからね。」
「うん。じゃあ…行ってきます。」
父も母も目に涙を浮かべていた。
瑠奈はいつも通りの笑顔で隼人を見ていた。
「お兄ちゃーん!」
駅へ向かうバスの停留所の前で振り向くと、瑠奈が一心に手を振っていた。
隼人の姿を少しでも長く見ていたかったのだろう。
隼人は片手を挙げて応えた。
それでも隼人の心には
前夜の瑠奈の涙が焼き付いていた。
隼人が抱える不安は、自分がいなくなることで瑠奈が寂しさに耐えかねて良くない道へ進んでしまうのではないか、というものだった。
だから隼人は瑠奈が来るたびに何度も聞いた。
「寂しくないか?」と
瑠奈はその度に満面の笑みで否定する。
心配をし過ぎて瑠奈の笑顔を信じきれていない自分に
腹が立ってもいた。−−−
「お父さんも休みの日に色んなとこ連れてってくれるし、お母さんも前より側にいてくれる時間増えたもん。こうやってお兄ちゃんともお話しできるし、全然寂しくなんかないよ。」
「ならいいんだけど、ね。」
「お兄ちゃん心配し過ぎ。」
「だって…大切な妹だし。」
隼人はわざと小声で言った。
「ん?」
「なんでもない。」
「なにそれー!もう!」
「学校、うまくいってるのか?」
隼人は話しを逸らした。自分の言葉がなんだか恥ずかしかった。
「はぐらかされたぁ…うん。今ちょうど夏休み。友達と旅行行ってきたんだ。あ…お兄ちゃんにお土産。」
そういうと瑠奈は小さな箱を出してテーブルに置いた。
「お。何だろ。」
「食べ終わったら開けてみて。」
瑠奈は目を輝かせた。
続く
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