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かけがえのないもの 8

[474]  デフレーター  2010-06-25投稿
隼人はビーズが散りばめられた箱を開けた。

すると…澄んだ音色が聴こえてきた。

「オルゴール…?」

「うん。オルゴール手作り体験みたいなのが出来る所があってね、お兄ちゃんが好きな曲もあったから…作ってみたんだ。」

ことあるごとに聴いてきたメロディーは、瑠奈の心が込められ、一層きれいに聴こえた。

「ありがとう、瑠奈。大切にするよ。」

「良かった、喜んでもらえて…じゃあ今度はこのフタ開けてみて。」

瑠奈はオルゴールのスライド式のフタを指さした。

「まだ、お土産あるの?…あ…」

そこには指輪が入っていた。いかにも手作りという雰囲気の、少しいびつな、しかし一生懸命作ったことが分かる、星型の飾りがついた指輪。

「これも…瑠奈が作ってくれたの?」

「うん。飾りのとこは七宝焼って言う伝統工芸の体験で作ったんだ。」

瑠奈はにこにこと隼人を見て、隼人の手から指輪を取った。

「手貸して。はめてあげる。」

「瑠奈…」

瑠奈は隼人の左手を取り、薬指に指輪をはめた。

隼人は瑠奈をじっと見つめ、微笑んだ。

「婚約指輪じゃないんだから…」

「細かいことは気にしないの。…うーん…ちょっとブカブカだけど、似合ってるよ。」

「ありがとう。」

瑠奈は隼人の左手の指輪を見て満足そうに笑った。

「これはね、子供の頃のお礼なんだ。」

「お礼?」

「覚えてる?私が確か7歳の誕生日の時。」

「7歳の誕生日…」

隼人はその時の事を思い出した。−−−


「瑠奈、お誕生日おめでとう!」

「ありがとう!」

家族全員で祝った瑠奈の誕生日。

皆が瑠奈を祝福し、瑠奈も家族の愛を存分に実感していた。

「瑠奈、プレゼントだぞ。」

「わぁーい!ありがとう!」

父は大きな熊のぬいぐるみを、母は可愛らしいドレスをプレゼントした。

「このドレス可愛いー!お姫様みたい!」

「瑠奈は家のお姫様だもの。きっと似合うわよ。」

「ありがとう、お母さん!」

瑠奈の幸せそうな笑顔に、家族も幸せな気分になっていた。何しろ家族全員で同じ時間を過ごすことが、他の家族と比べて少なかったから。

特別な時間だった。貴重な時間だった…

続く

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