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終わりは始まり

[486]  ミーーン  2010-06-25投稿
最近何かがおかしいと感じる。

吹く風、照る月、晴れ渡る空、清んだ水、温もりの炎、豊饒の大地、静寂の闇、万物を公平に見守る太陽。


春に産まれ、夏に生き、秋に老い、冬に死ぬ。


世界は通常なんらかわりないように動いているように思うが、何やら異変を感じとる者がいた。

「出生率が下がっていると?」

低く通る声が目の前にいる男に問う。

「はい、陛下・・・ここ数年わずかではありますが、低下の兆しがみえまする」

声に萎縮した様子が感じとれる。
「近年、不作の年が続いておりまする。中には体を弱くするものもいるようで、それだけではないと思うのですが・・」

陛下と呼ばれた男は腰を椅子に深く座り直す。
片手をあげ目の前の男に向け手をふる。

「わかった、もうさがってよい」

一礼し男は静かに部屋をでる。

残された部屋に一人、陛下と呼ばれた男はうつむく

「あれはまことか?」

誰に聞かせるわけでもなく、呟いた。


最近おかしいと思う。

高い塔の窓から顔を出し、眼下にひろがる町並みをみつめる。
昼間なら市や、働く者の声で騒がしいけども、最近はなんかシンと静まりかえっているように思う。

若かった。窓から顔を出すのは青年とよぶには早すぎで、少年とよぶには幼さもなかった。

彼は王子であった。額には赤いルビーの飾りがみえる。
第一王子の証。

コンコン


木扉の叩かれる音が耳に届く。

「誰か?」

王子が木扉を見つめて問う。

「王子、父上が、陛下がお呼びでございます。お部屋にてお待ちだそうでございます」

王付きの女官だろう。

「わかりました。参りますとお伝えください」

王子が木扉のむこうにいる女官に声をかけた。

布が擦れる音がする。足音と共に気配が遠のく。

”父がおよびか・・なんだろう”

最後にもう一度町を見つめてドアをしめる。


コンコン

「父上、参りました。入ります」

返事をまたずに入る。

中央にしつらえられた椅子に王は腰掛けていた。両手の平を組みそのうえに顎をのせている。

何かあったか?

王子は上目に王を見据え思った。

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