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生涯の恋人 7話

[315]  ふく  2006-08-28投稿
「ねぇ、覚えてる?二年生の時、会話したこと。」

「え?いつ?」

「集会があった時、俺が岩村さんに話しかけたんだけど。覚えてないかな。」

「あぁ、何となくなら覚えてる。」

嘘をついた

本当は鮮明に覚えている

あの頃は今のような感情はなかったが 『かっこいい』と思っていたし 少なくとも気になる存在で気が付くといつも彼のことを目で追っていた

そんな彼との数少ない会話を忘れることはできなかった

―あれは二年生の学年集会

外は雨

彼と私は出席番号が近かったが 男女二列に並ぶと必ず一人ずれて隣同士になることはなかった

でもその日は彼の前の男の子が欠席していて幸運にも彼の隣に座ることができた
校長先生の話は相変わらず長い
みんな始めは静かに聞いているが いつしかポツポツと話始める人が出てきて
挙げ句の果てには寝てしまう人までもいた

「雨すごいね。こんな日も部活あるの?」

突然彼が話しかけてきた

正直驚いた

同じクラスでも彼と話すことはなかったからだ

「うん、あるよ。筋トレだけだけど。」
当時私はテニス部のマネージャーをしていて、引退したのは最近だった

「大変だね〜。」

「うん。」

会話はそれ以上は続かなかった
私はすぐ前を向く振りをして彼から視線を逸らした

話しかけてきてくれたことが何だか嬉しくて急に恥ずかしくなってしまった

ドキドキしていた―\r

「あの時さ、俺が部活あるの?って話しかけたら冷たく返事返されて、会話も全然続かなくて、俺嫌われてるんだって思った。」

「あ…ごめん。」

「何かあの時の会話、すげぇ覚えてんだよね。嫌われてるって思ったからだろうけど。だから岩村さんの気持ち聞いた時はかなりビックリしたよ。 でも嬉しかった。」

私はうつむいてしまった
彼が私の気持ちを聞いて嬉しいと言ってくれたこと
何よりもあの些細な会話を覚えていてくれたことが素直に嬉しくて心に強く響いた

でも
『嫌いなんて思ってなかったよ ただ話すのが恥ずかしくてうまく返事ができなかっただけなの』
なんて口に出すことはできなかった

あの時の気持ちは 私の胸の中だけにしまっておくことにした

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