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欲望という名のゲーム?14

[349]  矢口 沙緒  2010-06-26投稿



「この屋敷もこの生活も、雷音寺家の財産とは全く関係がありません。
雅則様が自らの手で築いたものです。
その点に誤解がありませんように」
「独自の才能って、いったいなんだったんですか?」
喜久雄が聞いた。
「皆様方ご兄弟は、お互いに全くの音信不通状態でしたので、知らないのも無理はありませんが、雅則様にはゲームの才能があったのです」
「ゲーム?
ゲームって将棋やトランプなんかの、あのゲーム?」
深雪が不思議そうに鹿島に尋ねる。
「そういえば、兄貴は学生の時そんなクラブに入っていた気もするが…」
明彦が思い出したように言う。
「そうです。
深雪様が言いました通り、将棋やトランプなどのゲームのことです。
ただし、ゲームと一口に言いましても、その数は無限に近いほどあります。
雅則様はそのほとんどを研究され、そして精通しておりました。
現在、雅則様のゲームに関する著者は十六冊、そのうちの十ニ冊までが世界中で翻訳されております。
残りの四冊は碁と将棋に関するものなので、世界にとまではいきませんでしたが、国内では現在も売れ続けております」
鹿島の話を聞いて、五人とも少なからず驚いた様子だった。
彼らは兄弟としては、あまりにもお互いの事を知らなすぎた。
それぞれが学校を卒業して自由になると、自然に離れていき、そして全くお互いに連絡する事もなくなった。
誰がどこでどのような生活をしているのか。
結婚しているのか、いないのか、生きているのかいないのかさえ、お互い知らずにいた。
それには幾つかの理由があった。
雅則が人里離れた山の中の屋敷にこもったことも、そのひとつだろう。
しかし最大の理由は、明彦と喜久雄と深雪の三人が、五千万円という手切れ金同然の金を持たされて、雅則に追っ払われたと心の奥で思い続けている事だろう。
そして、現在この三人が、決して成功者とは言いがたいのも、お互いに連絡の取れない理由のひとつとなっている。

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