かけがえのないもの 16
「瑠奈が…事故で死んだ…」
父の言葉が隼人の頭の中を回る。瑠奈は自分の目の前にいる。
どういう事なんだ…
瑠奈は隼人に体を預けながら口を開いた。
「信じたくないよね…分かるよ。私もだもん…」
隼人の顔を見上げて微笑む瑠奈
「お兄ちゃん…ごめんね。先に死んじゃって…」
「でも…俺、確かに感じたよ。瑠奈がぎゅって手つかんでくれたのも…」
隼人は今にも泣きそうな表情になった。
「うん…じゃあ、本当のこと、言うね…」
瑠奈は目をつむった。
「バスが転落して、崖に落ちた時…私の意識もどっかに飛んじゃったんだ…でね、気づいたら、天国にいたの。」
隼人は呆気にとられたような顔で瑠奈を見た。瑠奈は隼人の手をまた強く握った。
「本当なんだよ。私も…まさかと思ったんだけどね…お花畑がずっと広がってて…すごくきれいなとこなんだよ。」
「瑠奈…」
「そしたら…目の前が急に眩しくなって…声が聞こえたの…『ここは天国。お前は今からここで暮らすんだ』って…」
「それって…神様?」
「うん…そうだと思う。それで、私ようやく分かったんだ。ああ…私死んじゃったんだなって…」
いつの間にか瑠奈の目にも涙が浮かんでいた。
「そしたら神様がね、『やり残した事はないか?少しだけ時間を与える』って言ってくれた…」
「時間を…?」
「うん。幽霊状態でっていうか…実体ではないけど、触ることも話すことも食べたりすることもできるって…」
そうか…だから死んでしまっても普通に話したりオムライスを食べたり出来たのか…
隼人は頭の中で状況を整理した。
「私、このまま死ぬのはどうしても嫌だった。死ぬ前に、どうしてもやっておきたいことがあるんですって…神様にお願いしたんだ…」
「まさか…」
「うん。お兄ちゃんに会いたい…お兄ちゃんのオムライス食べたい…お土産を渡したい…もう一度思い出を共有したい…お兄ちゃんにありがとうって伝えたい…最後の瞬間はお兄ちゃんと一緒に過ごしていたいって…」
全ての真実が分かった。隼人の心は不思議と晴れやかだった。そして…途方もなく寂しくなった…
続く
父の言葉が隼人の頭の中を回る。瑠奈は自分の目の前にいる。
どういう事なんだ…
瑠奈は隼人に体を預けながら口を開いた。
「信じたくないよね…分かるよ。私もだもん…」
隼人の顔を見上げて微笑む瑠奈
「お兄ちゃん…ごめんね。先に死んじゃって…」
「でも…俺、確かに感じたよ。瑠奈がぎゅって手つかんでくれたのも…」
隼人は今にも泣きそうな表情になった。
「うん…じゃあ、本当のこと、言うね…」
瑠奈は目をつむった。
「バスが転落して、崖に落ちた時…私の意識もどっかに飛んじゃったんだ…でね、気づいたら、天国にいたの。」
隼人は呆気にとられたような顔で瑠奈を見た。瑠奈は隼人の手をまた強く握った。
「本当なんだよ。私も…まさかと思ったんだけどね…お花畑がずっと広がってて…すごくきれいなとこなんだよ。」
「瑠奈…」
「そしたら…目の前が急に眩しくなって…声が聞こえたの…『ここは天国。お前は今からここで暮らすんだ』って…」
「それって…神様?」
「うん…そうだと思う。それで、私ようやく分かったんだ。ああ…私死んじゃったんだなって…」
いつの間にか瑠奈の目にも涙が浮かんでいた。
「そしたら神様がね、『やり残した事はないか?少しだけ時間を与える』って言ってくれた…」
「時間を…?」
「うん。幽霊状態でっていうか…実体ではないけど、触ることも話すことも食べたりすることもできるって…」
そうか…だから死んでしまっても普通に話したりオムライスを食べたり出来たのか…
隼人は頭の中で状況を整理した。
「私、このまま死ぬのはどうしても嫌だった。死ぬ前に、どうしてもやっておきたいことがあるんですって…神様にお願いしたんだ…」
「まさか…」
「うん。お兄ちゃんに会いたい…お兄ちゃんのオムライス食べたい…お土産を渡したい…もう一度思い出を共有したい…お兄ちゃんにありがとうって伝えたい…最後の瞬間はお兄ちゃんと一緒に過ごしていたいって…」
全ての真実が分かった。隼人の心は不思議と晴れやかだった。そして…途方もなく寂しくなった…
続く
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