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欲望という名のゲーム?19

[413]  矢口 沙緒  2010-06-27投稿



    5

「正気なのか?」
明彦が立ち上がって叫んだ。
「どうかしてるんじゃない!」
深雪が恐怖に近い声を出した。
「狂ってる…」
喜久雄が怯えるようにつぶやく。
目を大きく開いた友子は、口を手で押さえたまま声も出ない。
孝子は無言のまま、画面を凝視していた。
画面の向こう側の雅則は、変わらぬ笑顔のままだった。
「…さて、その方法だがね。
ここに四枚の封筒がある」
彼はそう言うと、上着の内ポケットから封筒を取りだし、それが四枚あることを皆に示した。
各封筒にはそれぞれ、明彦、喜久雄、深雪、孝子と書かれている。
「この封筒の中には、全財産を相続する権利書が入っている。
たとえばだ。
この明彦と書かれた封筒には、明彦に全財産を譲ると書かれた権利書。
この喜久雄と書かれた封筒には、喜久雄に全財産を譲ると書かれた権利書といった具合に、四人分の権利書を用意してある。
この権利書はね、ひとつひとつは有効なのだが、しかし、二つ以上揃うと無効になってしまうのだよ。
二人以上の人間に、それぞれ全財産を相続させる事は不可能だからね。
私はこの四枚の封筒をひとつにして、この屋敷のどこかに隠す事にする。
その隠された封筒を探し出してもらおうと思う。
簡単に言ってしまえば、宝探しというわけだよ。
四枚の封筒を見付けた者は、自分の封筒だけを確保して、残りの三枚を破棄してしまえばいいのだ。
燃やしてもいいし、破ってもいい。
それで万事解決だよ。唯一有効なひとつが残るという次第だ。
どうかね、なかなか面白いだろう。
だが探すと言ってもこの屋敷は結構広い。
だからヒントを出そうと思う。
しかしね、その前に手続きをしてもらいたい。
ゲームに参加するための手続きだ。
鹿島君がこれから諸君達に渡す書類は、財産の放棄を宣誓する書類だ。
それにサインをしていただきたい。
誰かが首尾よく封筒を探し当てた後に、揉め事が起きないようにするための処置だ。
何事も、スッキリと終わらせたいからね」
そう言うと、画面の中の雅則は、またワインを口に運んだ。

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