欲望という名のゲーム?20
「諸君達がサインした財産の放棄書は鹿島君が預かる。
見事封筒を探し当てた者は、鹿島君に名乗り出てくれ。
彼がその者の財産放棄書を処分してくれる。
かくして、一通の有効な財産相続書と、三通の有効な財産放棄書が出来上がるわけだ。
どうだね諸君。
完璧だろう」
「確かによく出来ているわ」
孝子が感心したように言う。
「それからね。
私はもうひとつ書類を作ったよ。
これはすでに鹿島君に預けてあるのだか、内容はこんなふうだ。
明彦、喜久雄、深雪、孝子に、それぞれ五千万円づつを贈与する。
残りの財産は、全て国に寄付するというものだ。
もし、諸君達の誰か一人でも財産の放棄書へのサインを拒んだ場合、鹿島君が明日にでもその書類の手続きをする事になっている。
サインをしなければ、少なくとも五千万円だけは、確実に手に入るわけだ。
変な宝探しをして、何もかも失うのは嫌だ、と思う者はサインをしなくて構わないのだよ。
私は決してその者を臆病者とは言わないよ。
あえて愛国者と呼ぶことにしよう。
では、書類をじっくりと読んで考えてもらいたい。
また後程」
そこで映像はプツンと切れていた。
あとにはザーという雑音だけが残った。
鹿島がテレビのスイッチを切り、ビデオテープを取り出した。
異様な静寂。
誰も口を開く者はいなかった。
いったい、何が起ころうとしているのか?
これは何かの冗談なのか?
だとしたら、悪趣味というほかないだろう…
だが、もしも本気だとしたら…
誰もが頭の中で、そんな事を繰り返し考えている。
鹿島がそれぞれの前に書類を一枚づつ置いた。
「これがその書類です。
じっくりと読んでいただいて結構ですが、簡単に内容を説明してしまえば、財産の相続権を放棄するという宣言になります。
よく考えてお決めください」
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