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欲望という名のゲーム?21

[390]  矢口 沙緒  2010-06-27投稿



「兄貴は本気なのか?
こんな馬鹿げた、子供じみた事を本気でしようとしているのか?」
明彦が鹿島に聞いた。
鹿島はあっさりうなづいた。
「兄さんは死ぬ前におかしくなったのよ。
頭を癌に犯されたのよ。
そうでしょ?」
深雪の問いに、鹿島は首を横に振った。
「雅則様は、最後までしっかりしていらっしゃいました」
「そ、そうだ!」
喜久雄が何かを思い付いて声を上げた。
「ヒントだ。
兄貴はヒントを出すって言ってたじゃないか。
封筒のありかのヒントだ。
それはどうなってるんだ!」
「それはこのビデオテープには入っておりません。
もし皆様が揃ってその書類にサインをいただけました時は、その書類を私の部屋にある金庫に保管し、そして代わりに金庫から続きのビデオテープを持って来る、という手順になっております。
全員の書類が揃わない時には、ビデオの続きは金庫から出しません。
雅則様も言っていましたとおり、この書類がゲームへの参加手続きになるのです。
誰かが不参加だった場合は、ゲームはそこまでです。
続きを見る事はできません」
「なるほどね。
変人の考える事は、念がいってるわ。
どうやら、逃げ道はないようね」
深雪が呆れたというように両手を広げた。
ガタッと椅子を鳴らして、孝子が立ち上がった。
「私、部屋に戻って印鑑を持ってきます」
そう言い残して食堂を出て行った。

しばらくして孝子が食堂に戻ると、鹿島以外は誰もいなかった。
「みんなは?」
「皆様、印鑑を取りに部屋に行かれました。
やる気を出された、というところですか…」孝子は自分の席に戻ると、文書の内容も読まずにサインを始めた。
その様子を鹿島は不思議そうな顔で見ていた。
「これでいいのかしら?」
財産放棄書を鹿島に手渡す。
彼はそれを確認する。
「結構です。
しかし、ちょっと意外でしたね」
「何がですか?」
「いえ、このゲームに孝子様がこれほど積極性を示すとは、考えてもいませんでしたので。
むしろ反対なさるかと思っていましたが、最初に決断されるとは意外でした。
ほかの方も、あなたの決断を見て決心がついたようですよ」
それを聞いて、孝子が少し笑った。

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