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欲望という名のゲーム?22

[353]  矢口 沙緒  2010-06-27投稿



「鹿島さんは勘違いをしているわ。
私はゲームに参加したのではなくて、ただ財産を放棄しただけなのよ」
「おっしゃっている意味が、分かりませんが?」
「私は最初から財産を貰うつもりはなかったの。
今のままでいいの。
だからもし財産を四等分すると言っても、私はやっぱり放棄したわ」
そこへ明彦、深雪、そして喜久雄と友子の順に食堂に帰ってきた。
皆、無言のまま席に着くと、目の前に置かれた書類を読み始めた。
「おい、弁護士さん」
明彦が顔も上げずに言う。
「俺達にサインさせておいて、何かよからぬ事を考えているんじゃないだろうな?」
「私が…
ですか?」
「ここに全員がサインを済ましちまうと、少なくともその時点で、全員が財産を放棄した形になっちまう。
それを利用して金をせしめようとか…」
「なるほど。
明彦様が疑心暗鬼になられる気持ちも分かります。
しかし、私はこの財産を相続する権利も、そして手段もないのですよ。
勿論そんな気もありませんが」
「こっそり着服するかも」
深雪が言う。
鹿島がそれに答えるように笑った。
「着服ですか…
なるほど。
どこまでも疑い深いですね。
しかしいくら財産を管理していると言っても、その財産を着服する事など、事実上不可能なのですよ。
そういう仕組みになっているのです」
沈黙が続いた。
誰もが頭の中で、この鹿島という男の事を考えていた。
「仕方がない。
今はあなたの事を、信用するしかないようですね」
喜久雄が言い、サインを始めた。
「信用していただいて光栄ですね」
明彦、深雪もサインを終えた。
鹿島は集めた三枚の書類に目を通す。
「確かにお預かりいたします。
雅則様の言葉を借りれば、皆様は全員ゲームに参加する事になったわけです。
では、さっそく続きのビデオを持ってまいりましょう」
彼はそう言い残すと、食堂を出ていった。
五人のプレイヤー達は、鹿島が出ていったドアを見ていた。
そこには、雅則の金属製の笑い顔が揺れていた。

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