携帯小説!(PC版)

トラウマ

[541]  アイ  2010-06-28投稿
いろいろできるか試してて

気づいたら前へ進むための足を失ってた

怖がってしまった

失いたくないと思った

何を、とは深く問わずに

あたしは自分の身体を強く強く抱きしめる

増えていく痛みの傷口

拭いきれない血や粘液を頬に擦りつけて

苦しいのは自分だけ

違うと分かってるのに、必死でそう言い聞かせて目を閉じた

夜は好きだ

醜いあたしを隠してくれる

目を閉じてしまえばいつも夜

手探りで進んでつまずいて

ほら、また新しいトラウマが増えていく

……これ以上壁はいらないんだって

どっかで叫んでる「あたし」がいて

まだ人間でいたいって

体中の細胞が歌ってる

生きてるから生きてる

ただそれだけ

でも少しでもこの場所を好きになりたくて

せっかく流れてきたのだから

「ここ」へ辿り着いたのだから

痛みの記憶を引きずって

ない足を使って歩いていく

苦しいのはきっとあたしだけじゃない

ほらそこに、ここに、あそこに

手を振りかざして助けを求めてる人がいる

彼らを助けるのはあたしじゃない

彼らより少しだけ余裕のある人が救うんだ

あたしはあたしより不幸な人を見つけて救うんだ

そうやって巡り巡れば

世界中の人が救われないだろうか

世界一幸せな人は

たくさんの人を救える可能性を秘めているのではないか

そんな希望を抱いて今日も生きる

絶望に至る一歩手前で、あたしはあたしを引き止める

世の中捨てたもんじゃないよって

そう言ってトラウマは静かに笑った。

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