流狼−時の彷徨い人−No.57
春日山城に帰着した上杉政虎は、一つの書状をしたためていた。
それは武田信玄に宛てた、同盟を求める親書であった。
この同盟案を定めるに際し、政虎には珍しく家臣団を招集して意見を求めた。
本来なら、政虎は物事の決断に他の意見を必要としない性格であった。
重要な案件があれば一人堂に篭り、心を落ち着かせて良策を模索するのが、彼の常なのである。
これに対照的なのが武田信玄であった。
彼は家の方針を決める際は、必ずといっていいほどに家臣達の声に耳を傾けた。
上杉政虎と武田信玄ほど対照的で、実力の拮抗した人物が同じ時代、同じ場所に存在した例は、世界史的にみても稀であろう。
政虎は精神世界に重きをおき、信玄は実世界を重視した。
政虎は義のためならどんなに困難な戦でもひくことを知らず、信玄は多くの家臣を失うような戦なら迷わずひいた。
政虎は生涯妻帯せず、直系の子孫を残さなかったが、信玄は妻帯して幾人かの子を設けた。
もしも双方が、違う時代か離れた場所に存在していたのならば、各々が覇者になりえた人物であった。
だがその場合、彼等の存在は今ほどの輝きをはなってはいなかっただろう。
皮肉な事に、反目しあう互いの存在が、二人の人物像を同時代の武将達より際立たせる結果となっていたのだ。
それは武田信玄に宛てた、同盟を求める親書であった。
この同盟案を定めるに際し、政虎には珍しく家臣団を招集して意見を求めた。
本来なら、政虎は物事の決断に他の意見を必要としない性格であった。
重要な案件があれば一人堂に篭り、心を落ち着かせて良策を模索するのが、彼の常なのである。
これに対照的なのが武田信玄であった。
彼は家の方針を決める際は、必ずといっていいほどに家臣達の声に耳を傾けた。
上杉政虎と武田信玄ほど対照的で、実力の拮抗した人物が同じ時代、同じ場所に存在した例は、世界史的にみても稀であろう。
政虎は精神世界に重きをおき、信玄は実世界を重視した。
政虎は義のためならどんなに困難な戦でもひくことを知らず、信玄は多くの家臣を失うような戦なら迷わずひいた。
政虎は生涯妻帯せず、直系の子孫を残さなかったが、信玄は妻帯して幾人かの子を設けた。
もしも双方が、違う時代か離れた場所に存在していたのならば、各々が覇者になりえた人物であった。
だがその場合、彼等の存在は今ほどの輝きをはなってはいなかっただろう。
皮肉な事に、反目しあう互いの存在が、二人の人物像を同時代の武将達より際立たせる結果となっていたのだ。
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