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ミットに向かって―10―

[633]  沢村エイジ  2010-07-02投稿
「今日はすいませんでした!先輩達の3年間を・・・僕が・・」
「あぁ、もういいよ。気にするな」
口ではそう言っても、皆の目は冷たかった。

一人がこの集団から離れると、一人、また一人と集団が集団ではなくなっていった。最後に残ったのは光だけだった。

鈴木監督の最後のミーティングが終わった。
3年生は皆泣いているし、2年生にも泣いてるやつがいた。監督の話がよほど感動的だったのだろう。しかし、光は話の内容を全く覚えていなかった。聞いていなかった訳ではない。覚えていなかった。

翌日。
グラウンドには3年生の気配はなく、まだ主将も決まっていない新チームがぎこちなく練習をこなしていた。
光は練習には出ているものの、ブルペンで投げる様子は無かった。

「光!なんで投げないんだよ」武司にそう、言われてもごめんとしか言わずブルペンで投げる事は無かった。
「光ってなんかあったの?」
「え?・・・・あぁ」
圭介からの突然の質問を理解するのに一秒かかった

「よく分かんねぇけど、先輩達となんかあったみたいだな」

「光のやつ最近おかしいよなー。ちょっと暗くなったよし」

何も知らない圭介は無邪気な質問を投げてくる。武司は曖昧に返事をするだけで、違う事を考えていた。

翌日の練習も光はマウンドで投げなかった。道具の後片づけをしていると、突然武司に呼ばれたので行ってみると、そこには真野先輩が立っていた。

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