朱い月、白い太陽 3
機械人形が創られたのは、遥か昔。東方のある海に浮かぶ小さな島国だったそうだ。
核兵器を持たない、平和主義を掲げたその国が、第三世界大戦に『死なない』兵士として造り出したのが機械人形の始まり。
戦闘用として生まれた感情のない兵士たちは、恐怖やモラル、その他の感傷に捕われることなく、壊れるまで闘った。
痛みも感情もない彼ら。
けれど、その島国が大戦に勝利する訳もなく。
敗れたのちその素晴らしい技術力を買われ、ある大国の胃袋に飲まれてからは、ただその名前と文化の名残が、細々と息づくのみとなった。
日ノ本の国、緋出る国…。
『…朱緋様、朱緋様。センターからお電話です。ギーリア大神国のアリア大使です。』
私はドアを叩き、主を呼んだ。『センター』とは、今やあの大国に統一されたかつての国々の名残を留める国家機関。
そのかつて国々の文化を護ろうとする機関である。
朱緋様の不機嫌な声が聞こえた。
「うるさい。…俺はいないと言っておけ」
何を言っているんだ。万年引きこもりの癖に。
『朱緋様。もうモニターにアリア大使がいらっしゃるんです。こないだの会議もサボったでしょう?報告くらい聞いて下さい。』
「…どうせ奴ら、『核』の技術を寄越せとでも言っているんだろ。最近じゃどの国も喉から手が出る欲しがってるからな」
『核』…私達機械人形のコア。それを造り出せる技術は、今でもこの国にしかない。
それが一体どういう技術なのか…。機械人形である私にも分からない。
その秘密は代々、朱神一族に言伝に伝えられ、文面には一切残っていない。この秘密はけして誰にも話してはならない。例えそれが肉親でも。秘密は朱神誠意継承者にのみ受け継がれ、その秘伝の技は次の朱神継承者にしか伝わることがない。
しゃべることを強要され拷問されても、死ぬまで話さない。
先代のマスターは、自らを植物状態にすることで秘密と朱緋様を護った。
朱緋様は、秘密を知るただ一人の朱神。それがある限り、誰も彼を殺すことができない。
『…室内モニターに接続します。ちゃんと聞いて下さいよ』
私はそう言って部屋にモニターを出した。
わずかなノイズの後に、いささか脳天気なかわいらしい声が響く。
『へろ〜。引きこもり〜』
核兵器を持たない、平和主義を掲げたその国が、第三世界大戦に『死なない』兵士として造り出したのが機械人形の始まり。
戦闘用として生まれた感情のない兵士たちは、恐怖やモラル、その他の感傷に捕われることなく、壊れるまで闘った。
痛みも感情もない彼ら。
けれど、その島国が大戦に勝利する訳もなく。
敗れたのちその素晴らしい技術力を買われ、ある大国の胃袋に飲まれてからは、ただその名前と文化の名残が、細々と息づくのみとなった。
日ノ本の国、緋出る国…。
『…朱緋様、朱緋様。センターからお電話です。ギーリア大神国のアリア大使です。』
私はドアを叩き、主を呼んだ。『センター』とは、今やあの大国に統一されたかつての国々の名残を留める国家機関。
そのかつて国々の文化を護ろうとする機関である。
朱緋様の不機嫌な声が聞こえた。
「うるさい。…俺はいないと言っておけ」
何を言っているんだ。万年引きこもりの癖に。
『朱緋様。もうモニターにアリア大使がいらっしゃるんです。こないだの会議もサボったでしょう?報告くらい聞いて下さい。』
「…どうせ奴ら、『核』の技術を寄越せとでも言っているんだろ。最近じゃどの国も喉から手が出る欲しがってるからな」
『核』…私達機械人形のコア。それを造り出せる技術は、今でもこの国にしかない。
それが一体どういう技術なのか…。機械人形である私にも分からない。
その秘密は代々、朱神一族に言伝に伝えられ、文面には一切残っていない。この秘密はけして誰にも話してはならない。例えそれが肉親でも。秘密は朱神誠意継承者にのみ受け継がれ、その秘伝の技は次の朱神継承者にしか伝わることがない。
しゃべることを強要され拷問されても、死ぬまで話さない。
先代のマスターは、自らを植物状態にすることで秘密と朱緋様を護った。
朱緋様は、秘密を知るただ一人の朱神。それがある限り、誰も彼を殺すことができない。
『…室内モニターに接続します。ちゃんと聞いて下さいよ』
私はそう言って部屋にモニターを出した。
わずかなノイズの後に、いささか脳天気なかわいらしい声が響く。
『へろ〜。引きこもり〜』
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