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ロストクロニクル 10―5

[354]  五十嵐時  2010-07-03投稿
パールが小さなタクトの元へ行こうとした時だった。
「待って下さい!」
フラットが叫び声を上げた。
「どうしたの!」
「夢の世界がとても不安定なんですよ」
フラットは空を仰いだ。
パールとウェドもそれに倣う。
「なんだ・・・これ」
三人の頭上を赤黒く、今にも堕ちてきてしまいそうな不気味な空が覆い尽くしていた。
そして、聴こえてきた。
「キキキキキ・・・」
三人はゆっくり後方を振り向いた。
「夢・・・過去・・・中から・・・コワス・・・」
音もなく現れた死神がじっと三人を見据えていた。
「タクトを元に戻せ」
ウェドがハンマーを構えた。
「キキキキキ、コワス・・・コワス」
死神の足が僅かに地から離れ、そのまま宙に留まった。
「本当に、死神みたいですね」
フラットは掌の中に杖を出現させた。
「キキキキキ・・・」
「気を抜かないで、しっかり構えて・・・くるわよ」
パールも弓を構えた。
三人に嫌な緊張が張りつめる。
「キキキキキ・・・コワス、コワス・・・・・殺す!」
死神が宙に浮いたまま向かってきた。
「来いよ!化け物!」
ウェドが向かってきた死神の腹に強烈な一撃を与えた。と、同時に死神の姿が消えた。
「どこだ!」
「キキキキキ、夢の中では、百戦錬磨」
「ウェド後ろ!」
ウェドの後ろには、殴ったはずの死神がウェドと同じハンマーを振り上げていた。
「させるか!」
フラットがウェドの足下に魔法で魔方陣を描き出した。
死神はウェドに向けてハンマーを振り下ろした。
「ウェド!」
死神のハンマーがウェドの頭に当たった殺那
「魔方陣『カウンター』」
魔方陣が光を放ち、死神がよろめいた。
「助かった!フラット」
死神の頭に鈍い痛みが走る。
「キキキキキ」
死神はフラットの後ろに現れた。
「ガキ、ガキ、殺す」
死神の手には杖が握られていた。
死神はフラットの足下に魔方陣を描いた。
「殺す」
フラットの足が地面に固定された。
「しまった!」
死神は武器をハンマーに持ち変えた。
「こっちよ」
パールの弓矢が死神の腕に当たった。
「キキキキキ、オンナノコ、殺す」
死神がパールの後ろに現れた。
「わたしには効かない」
パールは素早く振り向き、手に握った小さな玉を死神の目の前で炸裂させた。

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