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帰ってくれ 4

[516]  デフレーター  2010-07-03投稿
綾香を待つ間、麻友美は亮平の部屋をうろうろ歩き回り、珍動物を見るような目で色んなものを見ていた。
「麻友美、ちょっとは落ち着け。」
「お兄ちゃん。麻友美が前来た時に置いてった歯ブラシはー?」
「あ、やべっ…」
亮平は慌てて洗面台から歯ブラシを持ってきた。
「何パニクってんの?」
「こんなんがあったら絶対修羅場だろ」
以前麻友美が遊びに来たとき、歯ブラシを持ってきていた。泊まるつもりだったんだろう。
当然その日のうちに帰ってもらったが、歯ブラシがそのままになっていた。
幸い綾香はそれから遊びに来てないので、問題はなかったが…
「全くお前ってやつは…」
麻友美に歯ブラシを突き返しながら亮平は溜息をついた。
「いいじゃん。妹なんだし。」
ほんとにお気楽だな…
そういう所は麻友美の長所でもあると思ったが、亮平は少々うんざりだった。
「お兄ちゃん、どしたの?」
黙っていると麻友美が首を傾げながら尋ねた。
「なんでもない。」
「あ、また瑠奈と比べてるでしょ?」
麻友美は隼人の妹の瑠奈と高校の同級生だった。高校では非常に仲が良かったらしく、お互いの兄を自慢していたりもしたらしい。
「麻友美は瑠奈には勝てないかもだけど、お兄ちゃんが好きって気持ちめっちゃ強いからね。」
「だったらあんまり困らせんなよ…」
「えー…麻友美がいつ困らせたっていうのー?」
「今現在だよ。連絡もよこさないでいきなり来やがって…」
「サプライズだよー」
亮平は、もういっそのこと綾香に何とかしてもらおうとすら思った。
多少のイザコザは免れないにしても、打ち解ければ女同士、話しも弾むだろう。
綾香…俺もう疲れた…早く来てこいつの相手してやってくれ…
その時

ピンポーン
インターホンが鳴った。
「亮平ー!来たよ!」
「来た。」
「え?え?彼女来たの?」
「シッ!」
亮平は麻友美を静かにさせ、ドアを開けた。
「遅くなってごめんね。」
「いや、大丈夫だよ。」
照れたように笑う綾香を、亮平は部屋にあげた。
「実はさ…」
「あんた、誰?」
亮平が説明するより先に、綾香は麻友美を見つけ、睨んだ。
うわー…やっぱり修羅場かよ…
麻友美はそんな綾香を余裕で見返し、微笑んだ。
「初めまして。いつもお兄ちゃんがお世話になってます」

続く

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